えるだま・・・世界の国から

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2007年 09月 25日

遥かなる遺産 Part1(2)

平山は飛行機の欠航のせいで市内のホテルが満室ではないかと心配したが、それは杞憂であった。チェックアウトしたホテルに戻ると、あっさりと宿泊することができた。飛行機の乗り損なったイラン人はホテルではなくてヤズドの親類の家に宿泊するのだろうと思った。

平山にとって今回のヤズド出張は初めてではなかった。半年前に一回、日帰りだったが、来たことがあった。そのときに市内を視察し、このホテルをみつけたのだった。アツーサも興味を示したので、次回の出張のときには是非そこに泊まろうと決めていたのだった。このホテルは、一般の住宅を改造してホテルにしたものだった。

一般の住宅と言っても、ホテルに改造できるくらいだから、元富豪の家である。巨大な家であるため、博物館にするかホテルに改造するかしかないという代物である。平山にとっては、イラン人のお金持ちの家を知ることができるので、興味津々というところであった。

チェックインを済ませると、夕食までにはまだ時間があったので、平山はアツーサと観光に出掛けることにした。ヤズドが拝火教の総本山のような場所であるということは平山も知っていたが、出張で来ているため観光する時間はなかった。アツーサもそこを見るのは初めてのようだった。

「アツーサ、その拝火教の寺院のこと、ペルシャ語では何て呼ぶの?」
「アーテシュキャデといいます」
「ん?アターシュって火の意味だったような?」
「そうです、よく覚えましたね」
「ペルシャ語は難しくて覚えられないけど、少しは覚えているよ」

平山はイラン人秘書のアツーサをいつも同行して仕事をしているので、挨拶以外ほとんどペルシャ語を覚える必要がなかった。イランにいてもペルシャ語を使わないのでは覚えられるはずがない。しかも、意味のないただのカタカナの集まりのような単語を覚えることは苦痛以外の何ものでもなかったのだ。

目的地に着くと、平山はがっかりした。寺院と言われる建物が新しくて、予想していた荘厳さというものが全然なかったからだ。エスファハンには荘厳で精緻な仕上げのモスクがあり、それよりも古い歴史を持つ拝火教の寺院というのだから、平山でなくとも期待したくなるのも当然であろう。

「アツーサ、イランには今でも拝火教に起因するものが残っているけど、日本にも同じようなものがあるんだ」
「え?」
「日本では、お盆という先祖を祭る期間があって、そこには迎え火とか送り火とかがあるんだ」
「それって拝火教の影響でしょうか?」
「うん、そうらしいよ。ペルシャと日本とは古い時代からつながっているらしい」

平山は、拝火教の寺院に一応仏教徒である自分が中に入れるかどうか気になったが、今では異教徒にも施設は開放されていた。施設の中は、平山の予想したよりも小さかった。中央にガラス窓があり、その奥で小さな火が燃えていた。訪問者は、平山たち以外には外国人のバックパッカーが二人いるだけである。

平山が説明文を読むと、小さな火は1600年近く燃え続けているとあった。24時間、薪を切らさずに補給し続けているなんて信じられないような気がした。アツーサによると、ヤズドの町には今でも多くの拝火教の信者が住んでいるという。イスラム教シーア派の国イランにおいて、拝火教の信者が存在しているということも興味深いものであった。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。

(参考)ヤズドにある拝火教寺院
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by elderman | 2007-09-25 08:36


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