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えるだま・・・世界の国から

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2007年 03月 04日

天使の都(23)

私の大脳は、「私はすけべえじゃない」と結論を下したようであった。私の手はミーの大腿部をマッサージするだけでそれ以上の悪さはできなかった。私の本能は大脳の判断を非難していた。それは当然だろう。

ディーも寝たようだし、それでは寝ようかとミーにおやすみを言った。私はなんだか自分が情けないような気がしてしょぼくれて自分の寝室に向かった。30分しても眠れない・・・

起きてリビングにあるウイスキーでも飲もうと思った。ミーはまだ起きていた。彼女はそっと起きて来て言った。

「眠れないのですか?」
「うん、そうらしい」

私は彼女を自分の寝室に導いた。ミーは付いて来た。二人でベッドに座った。私が彼女にキスをしようとすると前にホテルであったような拒絶感があった。激しい拒絶ではない、なぜか望んでいないという漠然とした否定なのだ。私は諦めた。この子を手ごめにしてはいけない、大事な人なんだから・・・

私は彼女を寝室に帰した。自分が紳士であるなんてことよりもなんだか自分が情けなかった。私は京都大学の助教授という肩書きが紳士を気取らせたとは思っていない。いくら自分の欲求が強いとは言え、相手が望まないことを強制したくないのだった。

私が眠れないままベッドにいると今度はミーが私を呼んだ。三人で一緒に寝ようと言うのである。せっかくの申し出である、私はとりあえず彼女の隣に入り込んだ。手で彼女の体をまさぐると、完全防御のような感じがした。あのふくよかな胸には大きなサポーターが巻いてあるような・・・ パジャマの下にブラジャーだったのだろうか。

隣にはディーが寝ている。私には分からない、今どうしたらいのか・・・ 多分、ミーにも分からないのだろう。こうして男女の間違いというのは起きるのかも知れないと思った。私はミーの胸にちょっと触るだけでそのベッドを後にした。そして自分のベッドに戻ると今度はちゃんと眠れたのであった。

翌朝、さわやかな目覚めであった。私は自分の動物的本能を殺すことができた勝利感よりも実際は敗北感を味わっていた。俺は情けない男だな・・・ でも、もう朝である。私は紳士、そう大学助教授であり紳士なのだ。言い訳にもならない言い訳で自分を誤魔化したのだった。

この日は公園を散歩して写真を撮り、のんびりと時間をつぶした。やはりバンコクの都会の喧騒とは違う。生き返ったような気がした。

帰りはあののろまな列車には嫌気が差したので、タクシーを捜した。幸いバンコクから来たタクシーがあったので帰りはタクシーで帰れることになった。電車で4時間でもタクシーなら2時間半でバンコクに帰れるのだ。

バンコクに着いたときはもう夜だった。

(つづく)

by elderman | 2007-03-04 20:10


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