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えるだま・・・世界の国から

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2007年 03月 04日

天使の都(16)

溝口専門家の帰国まで後1か月になった。最近の彼は最後のエネルギーを投入して彼の持っている技術移転を図ろうとしていた。その彼の誠意を感じたのか、タイ人研究員の態度も変って来たようであった。時既に遅しという彼の滞在2か年であったが、終わりよければすべてよしという発想がタイ人にもあるのだろうか、ともあれ溝口専門家の活動は生き生きとしてきた。

その彼が突然私にゴルフをやらないかと勧めてきた。私はゴルフはできるが道具を持参していないしと言うと、どこからかクラブを調達して来てくれた。そこまでしてもらったのでは付き合わない訳にはいかない。寄せ集めのクラブセットであったが、ゴルフができないことはないのだ。

溝口専門家はスクンヴィットに住んでいた。日本人が多く住んでいるところである。そこから私のいるホテルは途中になるので彼の車で拾ってくれるというのだ。彼は最近運転手を首にして自分で車を運転していた。ミーとのデートは週末二日できるものではないから週末の1日は私もフリーであった。

ミーは職場では私との関係は内緒にしておきたい雰囲気があった。私はそれを感じてあまり二人のプライベートな関係を話すことはなかった。しかしこういうことはそれとなく噂になるようで日本人チームのメンバーも薄々感じてはいてもあからさまには言わないでいるようだった。

ある日平井専門家が言ったことがある。

「花井先生が到着した時に、ミーはタイプの人が来たって騒いでいたよな。」

私がキャンティーンに行った時の秘書たちの笑顔はそういう話をしていたのだろうかと思い出した。平井専門家はにやにやしていた。最近彼はタイの生活に馴染んでしまったからもう日本でちゃんと働けそうもないなどとぼやいているのであった。

そうしている時に平井専門家の分野に、私と同じ短期派遣として中田専門家がやって来た。平井専門家はその中田専門家の世話に追われるようになった。私には平井専門家の実力は専門外なのでよく分からなかったが、仕事の方面ではタイ人スタッフと少し怪しい動きをしていた。リーダーがたまにぼやくのだが、やたら出張調査が多いのである。

リーダーは大分疲れているようだった。私はリーダーにストレス発散の必要性をアドバイスし、溝口専門家と一緒にゴルフを始めるように勧めた。リーダーは考えてみると言い、練習を開始する気になったようであった。

溝口専門家は悪く言えば少し堅物で意固地なところがある。ゴルフ場も普通の日本人が行くようなところではなかった。バンコクから2時間もかかるウォーターミル・ゴルフ場に行こうと言うのだ。値段が週末で500バーツ(約1500円)だから確かに安い。しかもそのゴルフ場は美しく整備されているのだった。

彼のよく行くゴルフ場は他にもあった。飛行場に隣接してある通称「エアー・フォース」というゴルフ場にもよく行っているようだった。このゴルフ場は飛行機が着陸するときに見えたゴルフ場なのだ。ジェット旅客機の騒音がさぞかしうるさいだろうと思われるゴルフ場で、日本人はあまり行かないコースである。ここのコースも安い。

溝口専門家のゴルフはあまり上手くない。私は100前後のゴルフだが、彼は110前後であった。几帳面な彼のこと、ボールを一生懸命みつめるあまり少し不自然な形のフォームでスイングをしていた。私もまだ100を叩くようなゴルフなので、あちこちでヘマをやらかし、彼と笑い合ったものだ。

そしてやがてリーダーが我々のゴルフに参加してくるようになった。

(つづく)

by elderman | 2007-03-04 21:20


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