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2006年 06月 24日

浮遊粒子状物質

私は大気汚染の専門家です。そこで、ちょっとした誤解についてお話したいと思います。実は、今日テレビ番組で手品みたいなことをやっていたので、思い出したのです。

手品では、二酸化炭素が空気より重たいという特徴を使っていました。もちろん、種明かしをしたのですが、化学の知識のある人にとっては不思議なことでも何でもないものでした。多分、多くの方々は空気より重たいガスは低いところに行くと聞いたことがあるのではないでしょうか。

では、クイズです。オゾン層を破壊すると言われているフロンですが、この物質は空気より重たいものです。それが、オゾン層を破壊する高さまで到達できるのでしょうか。空気より重たければ、オゾン層のある上空にまで到達する前に落下してきそうなものです。

このクエスチョン、実はイランの技術者から質問されたことがあります。専門家に近い人ですらこういう質問をするのですから、一般の人も不思議に思われることでしょう。実は、二酸化炭素が重たいという話も、フロンがオゾン層にまで到達するという話も、両方とも正しいのです。でも、その二つの話にはちょっとした条件の違いがあります。

二酸化炭素の話は、100%二酸化炭素のガスという条件があり、フロンの話では100%のフロンガスの話ではないのです。100%に近い状態のガスでは、その重さが窒素と酸素で構成される空気より重たいので実際に床の方に流れて行きます。都市ガスやプロパンガスでも同じことが言えます。しかし、濃度の薄いフロンガスでは話が違います。

ご存知でしょうが、空気中では浮力という別な力が働きます。空気中の濃度が薄ければ、物質の質量そのものよりもこちらの効果の方が大きくなります。1分子量で22.4リットルの容積になるなんて話は理科の授業で聞いたことがあるでしょう。液体や固体の状態とは違い、気体の状態では物質は大変大きな容積を持つことになります。

要するに、濃度の低い条件では、分子レベルでの質量よりも気体分子としての体積が問題になり、浮力は体積によって得られます。ですから、低濃度のガスの場合はその分子の重さというのは、ほとんど問題にならないことになります。フロンガスが上空にまで到達するのは、その効果のせいだということになります。

空気は80%が窒素、20%が酸素です。もしも、分子の質量が効くというなら、私たちは酸素100%の空気を吸っていることになります。酸素より軽い窒素は上空に逃げていってしまう理屈になるでしょう。しかし、現実はそうではありません。100%の酸素というのは爆発や火災ということで危なくてしょうがないということもあります。

石原東京都知事がペットボトルにディーデル排ガスからの浮遊粒子状物質を入れて、排出ガス規制の必要性をアピールしていたことをご存知の方は大勢いらっしゃることでしょう。粒子状物質というのは固体ですから、ガスに比べたらはるかに重たいものです。それが大気中に浮遊している・・・考えてみればこれも不思議なことだと思います。

実際問題として、大きな粒子は短時間で地上に落ちて来てますが、粒径の小さな粒子はなかなか落ちて来ないものです。例えば、黄砂の例を挙げればいいでしょうか。中国大陸から風に流されて日本列島までやって来ることがありますね。小さな粒子はガスと同じとは言わないまでも、空気中の滞留時間はかなり長いということです。

ということで、現在環境基準として粒径が10ミクロン以下の粒子(煤塵、ダスト)を浮遊粒子状物質と定義し、基準が設けられています。環境基準は人間の健康影響を考慮して設定されるものなので、現在は10ミクロンという粒径をさらに小さく見直す作業が行われています。大きな粒径の粒子は鼻毛や気管支の繊毛で除去できるので、肺にまで到達してしまう小さな粒径に変更しようというものです。現時点では、2.5ミクロン以下という粒径が注目されています。
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by elderman | 2006-06-24 10:22 | えるだまの観察


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