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えるだま・・・世界の国から

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2006年 03月 02日

シェフとの別れ

シェフことスリランカ人の使用人が今日辞めました。彼は2年と4か月くらい働いてくれました。辞めた理由は、実は彼はイランに不法滞在中で、それが警察にみつかり、1,000ドルもの罰金を払った上での退去ということなんです。彼は土曜日の朝、スリランカに向かって発ちます。

その後、多分ドバイにいる弟を単身で訪ねて、そこで働くことになるでしょう。イランに再度戻るという話もあったのですが、最終的に彼はイランに戻る選択肢は切り捨てたようです。今回の不法滞在に対するイラン側の措置に嫌気が差したという感じでした。

シェフとの信頼関係は、私が彼を雇うと決めたときから発生していました。そしてその関係は最後まで続きました。彼は当初はスリランカ大使のシェフとしてイランに来たのですが、なぜか大使と一緒に帰国せずにイランに留まったのです。そしてどういう訳か、建築関係の肉体労働をやっていました。

そういう彼を紹介してくれたのは、前のシェフのスリランカ人ですが、彼はイラン人と結婚してスペインに脱出してしまいましたが、今ではスペインのコスタ・デル・ソルでインド料理レストランを経営しています。その話は、スペインのアンダルシア旅行の記事で紹介しました。

建築関係の仕事をしていたシェフは、当時テヘランではなく、50kmも離れた隣の市で働いていました。子供が教育を受けなければいけない年齢になり、テヘランに移りたいという希望を持っていました。私は面接した結果、彼なら信頼できる人間だと思いましたから直ぐに雇うことを承諾しました。

しかし、彼は雇用者に言われ、建築関係の仕事を直ぐに放り出す訳にはいかず、1か月の猶予がほしいということになってしまったのです。私は1か月間くらい自分でなんとかやれるからと、彼の仕事の終わるのを待つことを約束しました。このことを彼は大変感謝しているようでした。私からすればいい人材を得るためには1か月くらいなんでもないという考えだったのですけどね。

シェフのお得意はデザート作りです。私があまり甘いものを食べないのが不運だったと思います。それでも、パーティがあるたびに彼は楽しそうにデザートを作っていたものです。前のシェフは料理人というよりも実業家のセンスがあって、当時でもケイタリング(仕出し)の仕事をしていましたが、後のシェフは職人気質を持った本当の料理人です。

インド料理はもちろん、イタリア料理などの西洋料理も作ってくれました。彼の用意してくれたものは、夕食だけなく、お弁当もでした。週末は自分で料理してしまいますので、私はほとんどイラン料理を食べずに4年間を過ごしたことになります。イラン料理を食べるのは出張のときくらいなものです。

彼の家族の生活費を賄うには、私のところからだけでの収入では無理です。彼は朝から民間企業で料理や掃除などの仕事をして、それから私のところにやって来ます。大使館などでパーティがあれば彼に声が掛かります。そういう状況ですから、突然の休暇や多少の遅刻は仕方のないことです。

私は日本人ですから、夕食は早くいただきます。7時までには食べ終わって、彼はそれから帰宅して家族と一緒に夕食をすることになります。日本人のもとで働けたことは、彼にとってもラッキーだったと思います。

使用人との関係を通じて、私はスリランカ人のいいところをずい分知りました。仕事はさぼらないし、思いやりもあります。使用人としてイラン人を雇って失敗した例をたくさん聞いていますが、スリランカ人に限ってはそういうことは考えにくいと思います。二人のシェフの両方とも給料のことについて一度も注文をつけたことはありません。いただけるものをありがたくいただくという精神のようです。私は、不満のない金額を支払っていたとは思いますけどもね。

私は、使用人は使用人だけども、仕事以外では対等な人間として付き合うようにしているので、このこともシェフを喜こばせたようです。今まで20年間いろいろな人に仕えて来たけど、今回のような経験は初めてだと言っていました。彼は、「上手く言えないけど、友人以上のものを感じる」と言って涙を流しました。

私はマレイシアでもインド人の運転手と交友があり、私の帰国する前日、彼が私と次男にご馳走してくれました。そしてその晩、別れるとその後、彼は朝まで泣いて過ごしたのです。翌朝、彼の目が腫れ上がっているのが分かりました。私がクールなのかも知れませんが、外国人の感情の起伏の大きさを知ると感動してしまいます。

不法滞在の件でもめている最中、私は、シェフは正直な人間なので、もしも退職金を早く渡してしまうと、不法滞在の罰金として払ってしまうといけないと考えました。そこで、今日まで一切の支払いを止めていたのです。そのせいでしょうか、一時は2,000ドルと言われた罰金が1,000ドルで済んだようです。既に退去手続きが終了したので、今日退職金と2月分の給料を支払いました。

明後日、奥様と一緒に最後の挨拶に来ることになっています。彼がスリランカに定住しようと、ドバイで働こうと、きっといつか会いたいと思います。世界はそんなに広くはないものです。いつか会える、きっと会える ~♩♪~♬~♩
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by elderman | 2006-03-02 02:07 | 日々の雑感


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