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えるだま・・・世界の国から

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2006年 02月 04日

呑兵衛の戯言(7)ジン

ジンをストレートで飲めるというのは呑兵衛の証であるような響きがあります。確かに美味しいように味付け香り付けをしてあるはずなんですが、私にはどうにもいけませんでした・・・ と言いながら今では、ジンのストレートも大好きです。これが杜松(ねず)の実の味なのかぁなどと感心しながら味わっています。

ジンというのは、「蒸留酒の一つで、ライ麦・トウモロコシを発酵させ、杜松(ねず)の実の香味をつけて蒸留したもの。17世紀半ば、オランダで創製されました」とありました。このお酒がイギリスに渡って大発展をとげ、ジンと呼ばれるようになったとのことです。

暑い国でのジン・トニックは妙に体を温めないので良い飲み物だと思います。飲んだ後の口臭もしないんじゃないかと思います。ドライ・マティーニも同じ感じですが、今や飲む人は少ないようです。私の愛読書であるサマーセット・モームの小説の中によく出てくるので、熱帯の国に行くと早速試したものです。

ジンではゴードン・ドライ・ジンが有名ですが、私はタンケライ(スペイン語読み)が一番癖がないので愛用しています。トニック・ウォーターはどこでも買えるので、ジン・トニックが一番簡単ですね。それがなければライム汁を絞って、ジン・ライム・・・ ライムがなければレモンでもOK。

実は「ジンのストレート」には悲しい思い出があります。それは私が30歳くらいの時でした。とても重要なプロジェクトを進めていたときのことです。そのプロジェクトの受託業者の担当者が酒豪でジンをストレートで飲むのが好きだという人間でした。年齢は私より2-3歳上だったと思います。とにかく彼の仕事は熱心でした。あまりの熱心さのせいでしょうか、まだ独身でした。

彼の風貌は一見ジャズ・ミュージシャンのような感じで、黒が似合いました。髪はボサボサの長髪。独身のせいか髪型のせいか少し薄汚く見えるのはしょうがないですが、難しい仕事の隅から隅までを熟知していました。にもかかわらず話し方は穏やかで、とても謙虚でした。

私は行政の担当官ですから、技術的な内容はもっぱら彼に頼っていました。私が「いつまでにできますか?」と聞くと、彼は決まって出来そうもない日を答えるのでした。「それは無理でしょう」というのはいつも私の役目だったのです。彼がどうして自分自身にそんなきついノルマを与えるのか私には信じられなかったくらいです。同じ会社の同僚に聞くと、彼は仕事を遅くまでやって(コンピュータを使うので使用者が少ない朝までということになります。)、後は酒を飲んで寝るばかりだと聞いていました。それがジンのストレートなのでしょう。

彼の頑張りのお陰もあって重要なプロジェクトは無事に終了し、行政施策にも移行させることができました。私が彼に感謝したことは言うまでもありませんでした。

ところが悲しい出来事が・・・ 2年後、突然、彼の訃報を聞きました。ある日、仕事が終わってアパートに帰った後、ベッドで眠りそのまま逝ってしまったのです。なんという一生だったのでしょうか、寂しい限りの一生に思えます。私は彼の働いていた会社に電話をし、両親の家を訪問し、墓参りをして来ました。

ジンのストレートと言うと、いまでも生前の彼のことが思い出されてなりません。

by elderman | 2006-02-04 21:24


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