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えるだま・・・世界の国から

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2005年 10月 17日

天使の都(10)

私の仕事が順調に進み始め、余裕ができてきた頃、ミーがバンコクでシーフードの美味しい店を紹介すると言って来た。どうやら私のホテルから近いところにあるらしいのだ。いつものようにソムチャイの車が私たちをホテルまで送ってくれると、ミーもそこで降りた。ミーはここで友人を待つという。

私たちがしばらく待つとミーの友人のディーが現れた。ディーはJOCO事務所の受付で働いていると紹介した。私は最初の挨拶で訪問したことはあったが、彼女のことは覚えていなかった。ディーはタイ人には珍しいムスリム(イスラム教徒)であった。タイ全土で5%くらいはいるという。ミーは色白だがディーは少し褐色の入った肌の色をしている。顔つきは女優の池上季美子に似ていて美人である。私は美人の二人が友人同士というのは珍しい組み合わせだと思った。

レストランまで歩くことにした。それほど近いのである。私は少し歩くと汗をかいてしまうが、彼女たちにはそんな心配はないようである。埃っぽい歩道を歩き、歩道橋で反対側に渡ると歩道にはたくさんの犬がだらしなく横たわっている。どの犬の人間に怯えたりしないででれーっと横たわっているのだ。歩行者の方が犬に注意して歩いている。私にはいかにも仏教国だなと微笑ましく思えた。

シーフードレストランは中国系タイ人の経営のようだ。看板に中国語でも店の名前が書かれていた。私には海鮮という部分しか読めないので中国語だと思ったのだ。料理の材料は店の前に並べられていた。種類の違ったカニやエビ、魚が氷の中に陳列してあった。私はカニが好きである。カレー味のカニ料理をこのとき初めて味わった。

ビールはシンハという銘柄を注文したが、これはドイツのビール製法を早くから取り入れたタイの国産ビールであった。このビールは日本のものに比べて苦味が強くアルコール度数が高い感じがした。胃腸が弱い私には少しきついビールに感じられたのだった。

ミーは先日行ったワット・プラケオでの写真を持っていた。私はキャノンの一眼レフを持参してたので観光地の写真を撮ったのだった。ミーは写真に撮られるのが大好きな子だった。彼女の写っている何枚かを焼き増しして渡したばかりであった。それを友人のディーに見せているのだ。ミーはフォトジェニックな女性だ。しかも撮影するたびに表情が違う。大人びたり、可愛い表情だったり、私は彼女に不思議な魅力があると思った。

食事を終えた私たちは近くにあるバイヨクタワーで珈琲を飲むことにした。バイヨクタワーは40階建ての塔のよう構造物だ。地震のない国だからこそこういう建築物ができるのだろう。最上階まで上がるとそこが喫茶室になっていた。私たちは窓際の席についたが、最上階が少し大きめに作られているので、直ぐ足元には地上が見えていた。私は高所恐怖症ではないが、それでも体がむずむずするような感覚を味わった。

ミーとディーは楽しそうにおしゃべりをしている。私にはさっぱり分からないが、それでもミーは私に時々話しかけてくれた。ディーはJOCOで働いているというのにもかかわらず、あまり英語が得意でないようだった。バイヨクタワーで珈琲を飲んで過ごしてる間にすっかり暗くなって来た。高層階から見るバンコクの夜景は見事な美しさであった。私が夜景を眺めているとミーが言った。

「今、このバイヨクタワーの2個目が建設中なんです」
「そう、もっと高いのができるの?」
「80階以上になるって聞いています」
「へぇ、それならもっと綺麗な夜景が楽しめるだろうね」

(つづく)

(この小説はすべてフィクションです。もしも類似する人物、機関があったとしても本小説とは何の関わりもありません。)

by elderman | 2005-10-17 01:35


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