えるだま・・・世界の国から

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2007年 11月 12日

遥かなる遺産 Part4(5)

平山は、アツーサに岡野と話したことについて話している。

「ミスター・平山、そんな危険なことはいけません」
「でも、ミニ・シャトルがあるかも知れないんだ。そこにあるかどうか、まずは確かめなくてはいけないんじゃないか?」
「それはそうですけど・・・」
「存在している限り、いつアーリマンの手先に落ちないとも限らないしね」
「でも、危険過ぎます」

アツーサは、まったく話に乗って来なかった。平山は、2歳の子供を持つ母として、それは当然なことだろうと思った。アツーサの協力が得られないのでは、平山と岡野ではどうしようもないことである。



木曜日になった。平山は、用事があると言って、アライーに来てもらった。平山は、岡野を拾って、シルダムから聞いた場所ソルケヘサールに向かった。

アライーの運転する車は高速道路を走り、テヘランの東の外れを目指した。住宅が少なくなったころ。アライーは高速の出口とは思われないような小さな道を曲がった。舗装されていない道路であった。

「平山さん、ほら、あれ、歩哨がいるじゃないか」

岡野が見ている方向をみると、レンガ造りの塀の上に塔があり、そこには銃を持った兵隊がいる。

「この建物、怪しいなぁ。軍関係の施設なんじゃないか?」

平山は、アライーにそのままゆっくりと車を走らせるよう頼んだ。ゆっくりと言わなくても、舗装されていない道なので、車はのろのろとしか走れない。塀はずっとつながっていた。1kmくらいあるように思われた。

途中に大きな入り口が見えた。中に兵隊が見えた。それを横目に車はそのまま進んだ。ようやく長い塀が切れるところまで進むと、交差点に差し掛かった。平山は、アライーに左折して、建物の反対側を進むように頼んだ。

塀に囲まれたところは、三角形をしているようだ。車は来たときと反対方向に進んでいる。今度は舗装された大きな道路なので、ゆっくり走ってもらわないといけない。しばらく行くと、別の入り口があり、英語の看板が目に入って来た。それには、「航空関係コンプレックス」と書かれている。

「平山さん、やっぱりここらしいな」
「どうして英語で表記されているんだろ?」
「どうしてかな、外国からの兵器の受け入れをしているということだろうか」
「なるほど、ペルシャ語が読めない国の人のためか。まさか、米国じゃないだろうけどね」
「ロシア?あるいは北朝鮮?」
「そうかも知れないね」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-11-12 07:34 | Comments(0)
2007年 11月 11日

遥かなる遺産 Part4(4)

平山は、それ以後は阿片の吸引を遠慮した。平山はやることがないので、マジディ部長にイランに未確認飛行物体の話があるかどうか訊いてみることにした。

「マジディ部長、イランでもUFOというのは話題になりますか?」
「UFO?どうかなぁ」

マジディ部長は、シルダム氏と何かを話している。阿片の効果なのだろう、マジディ部長はいつもより陽気にみえた。

「ミスター・平山、この地域にはこれまでにいろいろな飛行物体が落下しているそうだ。しかし、それが宇宙から来たものなのか、ソ連から来たものなのか、米国から来たものなのか、それは分からない。シルダム氏によると、それらを軍が保管しているそうだ」
「それらはどこに保管されているのでしょうか?」
「テヘランの郊外、ソルケヘサールに航空関係のコンプレックスの中にあるそうだ。ただ、ほとんどのものがそのまま放置されているらしい」
「いい研究材料になると思いますが」
「役に立つものもあるだろうし、価値のないものもあるだろう」

平山は、あの大きな石のようなミニ・シャトルはどのように扱われるだろうかと思った。バラバラにされてしまったか、あるいは手に負えなくて放置されているのだろうか。



「平山さん、そうなんだ。それは面白いなぁ」
「うん、興味深い情報だね、岡野さんの言ったとおりみたいだ」
「UFOがあるかも知れないね」
「あのミニ・シャトルがあるかどうかは分からないけどね」
「でも、可能性はあるし、他のUFOがあるかも知れない」
「そこまで話が飛躍すると、頭が混乱しちゃうよ」
「どう?行ってみないか?」
「イランの軍隊の管理下だよ。そんなことはとても無理じゃないか?」
「こちらにはミトラのパワーがあるんだよ」

平山には、岡野の意図したことが理解できた。ミトラのパワーを使えば、相手が軍とは言え、なんとかなるのではないかと思えるのだった。

「岡野さん、でも、保管されている場所が分からないよ」
「確かに、コンプレックス全体を探すなんてことはできないな」
「シルダム氏に聞いてみるか。でも、彼が知っているかどうか分からない」
「どうして、そこまで聞かなかったんだろうか」
「いや、軍の施設と聞いたんで、そこでもう諦めちゃったんだ」
「そっか、軍の施設に潜入するなんてことは考えられないものなぁ」
「そうだろ」
「ともあれ、そのコンプレックスを見に行ってみないか?」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-11-11 01:54 | Comments(2)
2007年 11月 10日

遥かなる遺産 Part4(3)

平山は、マジディ部長の4WDを降りて友人のシルダム氏のアパートに向かった。玄関に出て来たのは白髪の痩せた初老の男性だった。既に定年退職をして今は悠々自適の生活をしているとのことだった。シルダム氏は笑顔を見せながら平山と握手をして家の中に招き入れた。

平山が案内されたのは、シルダム氏の書斎のようであった。そこには、パジャマのようなゆったりとしたものが置いてあり、なぜかマジディがそれを着るように勧めた。リラックスするためらしい。マジディ部長も着替えて、床にある座布団の上に座った。

イランでは、レストランでも和室のように床に座ることがある。平山は、座ることには抵抗はなかった。のんびりくつろぐのには最適かも知れないと思った。そうしていると、シルダム氏が紅茶を運んで来てくれた。角砂糖の変わりに黄色い砂糖が大きなボールに入れられてあった。平山はサフランの色だろうと思った。

シルダム氏は再び部屋を出ると、今度はなにやら道具箱のようなものを持って来た。マジディ部長は、平山にシルダム氏が彼の兵役時代の上官であったことを説明した。シルダム氏は英語を話さないので、平山は直接の会話をすることができなかった。シルダム氏は、道具箱からナイフを取り出して、何かをスライスしているようだった。

5mmくらいにスライスされた欠片に火を点け、それを溶かした。部屋の中に奇妙な臭いが漂った。シルダム氏は、それを金属のヘラのようなもので取って、棒のついた丸い頭につけた。そして、溶けたものをヘラで丸く固めて、棒の反対側の端を口につけ、ライターの火を溶けたものにつけて吸い始めた。

そして、それをマジディ部長に手渡した。マジディ部長は手馴れた様子で頭のついた棒を扱い、大きく吸い込んだ。このとき、平山はようやく彼らのやっていることの意味が理解できた。これは阿片なのだ。

マジディ部長によると、シルダム氏は定年退職をして、このようにして阿片を毎日楽しんでいるという。阿片中毒ではあるが、コントロールした量で楽しんでいるというのだ。マジディ部長が吸い終わると、シルダム氏は再び同じ作業をしている。マジディ部長は、次は平山の番だと促している。

平山は躊躇した。あの阿片である。繰り返しやらなければ麻薬中毒にはならないだろうが、麻薬であることには違いない。もっとも、阿片はモルヒネの原料になるので、それ自体が有害なものではないと思った。平山は、マジディ部長の手前、拒否するというのも具合が悪い。

平山は手渡された煙管を持った。マジディ部長がライターで火を寄せてくれている。平山は、覚悟を決めて煙管を吸い込んだ。とても美味しいは言えない香りであった。マジディ部長はもっと大きく吸い込むように促している。平山はさらに大きく吸い込んだ。

平山は、体全体が元気になるような気がした。幻覚などはない。平山は、麻薬のようなものは常習しなければ、幻覚などを直ぐに味わえるものではないだろうと思っている。

マジディ部長は、平山に砂糖をいっぱい入れて紅茶を飲むように勧めた。大きく息を吸い込むせいか、血圧が下がるというのだ。平山は、脳貧血になった人に砂糖水を与えるということを思い出していた。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-11-10 00:00 | Comments(4)
2007年 11月 09日

遥かなる遺産 Part4(2)

「進歩なんて必要なのでしょうか?」とアツーサに言われた平山は答えに窮してしまった。日本という先進国に生まれた平山だが、今の日本がイランよりすべてにおいていいと言えるのかどうか疑問に思えるのである。

平山は思う。人間には欲望がある。平和はもちろん必要だが、誰だって世界各国を旅行してみたいだろうし、文化水準の高い暮らしをしたいだろう。美味しいものを食べたいということもあるだろう。物質欲といえばそうだが、こういう欲望を捨てることはできないのではなかろうか。

問題なのは、進歩している日本だが、そこに住む日本人がそれほど幸せそうでないということである。平山は自分自身を不幸だなんて思わないが、このところの日本の様子はおかしい。正直なところ、イランが発展して、もしも日本のようになるとしたら、あまり嬉しくないのだ。

イラン人の子供たちは、素朴であり、大きな目を輝かせている。そして、親をとても大切にしている。こういうものが日本ではあまり感じられないのだ。もちろん、日本人にとってイランでの生活は、日本に比べれば不自由なことばかりである。

「アツーサ、私たちには知りたいことがいっぱいある。戦争を避ける知恵もそうだし、人間の欲望への対応についても知りたいと思う。宇宙船には多くの知識が集積されているのではなかろうか」
「興味深い話ですが、それにはミニ・シャトルがなければどうにもなりません」
「そうだった。消えたミニ・シャトル、手掛かりはないものかなぁ」
「盗掘されたことは間違いはありません。でも、どこに持ち去られたのでしょう」
「お金が目当ての盗掘なら、知られずに済むはずはないのだが」
「いつの時代でもそうでしょうね」

そんな話をしていると、そこにマジディ部長がやって来た。

「サラーム。ミスター・平山、ハレショマーチェトレー?」(ご機嫌いかが?)
「フバン・メルシー」(元気です)

このくらいのペルシャ語なら平山にもできた。ただし、そこまでである。平山は、アツーサに紅茶を淹れるように頼んだ。マジディ部長が平山のオフィスに来ることは、それほど頻繁ではなかった。平山には、マジディ部長がどんな用件で現れたのか気になった。

しかし、マジディ部長はとりとめのないことを話しているだけだった。そこで、アツーサが化粧室に行くと言って、部屋を出て行った。すると、マジディ部長が小さな声で平山に言った。

「今度、楽しいことをしよう」
「え?楽しいことですか」
「そう、リラックスして過ごすんだ」
「木曜日にアパートに迎えに行くよ」
「はい、分かりました」

マジディ部長は、アツーサには聞かれたくないような感じだった。どこに案内されるのか平山には分からなかったが、マジディ部長の誘いなら断る理由がない。

(つづく)

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by elderman | 2007-11-09 00:00 | Comments(4)
2007年 11月 08日

遥かなる遺産 Part4(1)

ここはテヘランにある薄暗いオフィス、三人の男が話をしている。平山たちがスピードガンを探しに来たところである。

「あのときは、まんまとしてやられたものだ」
「へい、戻って来てトラックの荷台を見たら驚ろいたのなんのって、完全に消えちまった」
「直ぐに引き返したら、空の洞窟への入り口があっただけ。いったいどうなってるんだ」
「チャガタイさま、あいつらがミニ・シャトルを隠したのでは?」
「あんな短時間でそんなことができるはずがないだろ!それに、どこにも穴なんてなかった」
「へい、そのとおりで」

弁髪の男の名前は、チャガタイという。モンゴル系の名前である。

「洞窟の中に隠し部屋でもないかと思ったのだが」
「あれだけハンマーで叩いても何もありやせんでしたぜ」
「入り口を隠しもしなかったってことは、やつらもその時に空だと知ったのかもな」
「さすが、チャガタイさま、鋭い読みですなぁ」
「バカヤロー、おまえにそんなことを言われても嬉しくもない」
「最初からないことを知っていて、あそこに案内したのかも知れませんぜ」
「可愛い孫のためにそんな危険を犯すはずがないだろ」
「それもそうで・・・」
「問題は、山道で左折したとたん、飛び出して来たアツーサですぜ」
「三人で彼女を見てしまったからもういけませんや」
「あそこでまんまとはまったという訳だな、ちくしょうめ」



一方、平山のオフィスでは、平山とアツーサが話をしている。

「岡野と話をしたのだが、空から現れた三人は意図的に分散したらしい」
「ミスター・平山。そうなんでしょうか?」
「もちろん、本当のことは分からないが、その後人類の悲劇が始まったとはいえそうだ」
「よく分かりませんが」
「悪魔と言われるアーリマンだが、実際は自然科学の研究を進めたのだろう。そして、目的のためには手段を選ばないという恐ろしい性格を持っていた」
「ミトラが抑えていたのですね?」
「そう思う。だから、アーリマンは逃げ出したのかも知れない」

アツーサは、そういう事情についてはまったく知らないようだ。平山は、彼女はミトラのスピリットを強く受け継いでいるだけだと思った。必要があれば、再び夢としてミトラを登場させてくれるのかも知れないとも思った。しかし、あの2回の夢の後、ミトラが登場する夢をみたことはない。

「アツーサ、もしも、宇宙船に行ければ、平和の鍵というか、戦争を避けられる方法が見つかるかも知れないと思うのだが」
「アーリマンを撲滅すればいいのでは?」
「いや、それでは人類の進歩がなくなってしまう」
「進歩なんて必要なのでしょうか?」

(つづく)

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by elderman | 2007-11-08 00:00 | Comments(2)
2007年 11月 07日

遥かなる遺産 Part3(16)

平山は、岡野のアパートにいる。週末に起きたことについて岡野に話をしている。

「という訳なんだ。大変だったよ」
「すごいなぁ、ミトラのパワーを目の当たりにしたってことか」
「パワーというか、幻想を見させられたということらしい」
「集団催眠の極意という訳か」
「その場にいた全員が幻想を見せられたのだからねぇ。あ、カリムには見えなかったようだけど、まだ2歳だしな」
「しかし、本当にミニ・シャトルがあったんだぁ」
「あったんだろうなぁ・・・ 本物を見た訳じゃないけど・・・」
「それもそうだな・・・」
「しかし、本物のミニ・シャトル、一体どこにあるのだろうか?」
「イランでもUFOの目撃報告はあるようだけど」
「まさか、それがミニ・シャトルだって?」
「可能性がない訳じゃないけど、限りなくゼロだね」

そこで、突然岡野は話題を変えた。

「ずっと考えていたんだけど、三人が分かれたというのは、喧嘩でもなく、不本意でもなく、必然だったような気がする」
「マツダとアリマ、そしてミソラのことか」
「ミソラ、いや、ミトラは高度な精神科学、つまり、宗教や哲学、心理学が得意で、アリマは自然科学、そして、マツダは法律のような社会科学を得意としている」
「それらが、仲良くしたらいいように思うけど」
「そこが問題なんだ。ミトラと一緒ではアリマは自由になれないだろう」
「つまり、自然科学が発達しないということか」
「倫理観・宗教観が強過ぎれば自然科学は進歩しにくく、倫理観のない自然科学の進歩というのは恐ろしいな」

平山はガリレオ・ガリレイのことを思った。ミトラのパワーが強いとアーリマンの主張が通らない。しかし、このケースではアーリマンが勝利したのだ。科学的事実が、宗教という精神文化を倒したとも言えるのではないか。

「平山さん、人類は戦争という悲劇を繰り返して来ているけど、あらゆる分野の進歩のためには、善と悪、ミトラとアーリマンとが戦いを続ける必要があるんじゃないだろうか」
「悲劇の始まりでもあり、進歩の始まりだったということか」
「どちらに偏ってもまずいことになるだろう。狂信的な宗教国家というのは困りものだし、健全な精神のない科学技術だけの先進国というのも怖いだろう」
「法律だけの国家というのも嫌だな」
「だから、善と悪が渾然として存在いる方が、健全に進歩し、進化できるというものではないだろうか」

(Part3 おわり)

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by elderman | 2007-11-07 00:05 | Comments(2)
2007年 11月 07日

遥かなる遺産 Part3(15)

木曜日、金曜日、土曜日と続いた三連休は終わり、平山とアツーサは大変な事件に巻き込まれてしまった。今日、日曜日は、二人とも何事もなかったかのようにオフィスにいる。

「アツーサ、前にやった全国規模のセミナーだけど、成功裏に終わったと思っていたけど、あれって集団催眠じゃないよねぇ」
「まさかぁ、そんなことするはずないじゃないですか」
「あはは、そうかそれなら良かった」
「ミトラのパワーはそんな邪心で使えるものではありません」
「そうか、そうか、なるほど、疑って悪かった」

平山は冗談を言ったのだった。アツーサもそれに笑って答えたが、突然表情を変えた。

「でも、ミニ・シャトルはどこにあるのでしょうか?」
「昔に盗掘されたなら、どこかにあっても良さそうなものだけどね」
「なんとかして見つけ出さないと・・・」
「そんなことを言っても、雲をつかむような話でどうしようもないなぁ」
「そうですね」
「それに悪用されてもいないようだから、今のところ問題ないんじゃないの?」
「ミニ・シャトル自体にはそれほどの技術はないでしょう。そもそも何だか分からないでしょうし」
「3,000年もの間、腐食したり、錆びたりしないのだろうか?」

平山はイランで多くの遺跡を見たが、3,000年前の遺跡なんて石しか残っていないのだ。宇宙人の宇宙船だって長い年月が経てば、元の状態ではいられないと思われるのだった。

「ところで、今回の事件のこと、岡野に話をしてもいいかな?」
「他の人に知られては困ります」
「でも、彼とは夢のことも話し合ったし、彼の夢の解釈は正しかった」
「そうですか、ミスター・岡野も、やはりスピリットを感じてイランに来られたのでしょうか?」
「それはどうかなぁ、赴任先はイランでなくても良かったようだし、自分の意思で来たものでもないしね」
「ミスター・平山が信じられる人だというのならいいでしょう」
「それは大丈夫だ。今回の件に関していい相談相手だしね」


(つづく)

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by elderman | 2007-11-07 00:00 | Comments(2)
2007年 11月 06日

遥かなる遺産 Part3(14)

「アツーサ、ミニ・シャトルを持って行かれちゃったけど、これからどうやって奪い返そうか?」
「大丈夫です。彼らは何も持って行っていませんから」
「え?」
「私たちが見たものは存在していないってことです」
「ああ、これが集団催眠なのか・・・」
「全員がミニ・シャトルのイメージを持っているので、それほど難しいことではありませんでした」
「なるほど、そういうことなのか・・・ それにしてもずい分凝ったことをしたものだ」
「そうしないと誰かが殺されそうだったし、カリムが別のところにいると考えていましたから」

平山は思った。ミニ・シャトルを誘拐犯に渡さないことには、カリムが無事ではいられないとアツーサが考えたのだろう。彼らがカリムを連れて来ていたというのは、アツーサには意外なことだったようだ。カリムが別な場所で監禁されていて、携帯電話で「ミニ・シャトルを奪えなかった」という連絡でも入れられたら、カリムの命が危ない。

「ふむ、それにしても、すごい作戦だったねぇ」
「ミニ・シャトルを知らないカリムには、不思議な光景に映ったと思います」
「何もないのにみんなで作業をしていたということなのか・・・」

平山は、ついいままで自分たちのやっていたことが滑稽に思えて来た。

「アツーサ。では、本物のミニ・シャトルはどこにあるの?」
「え!中にないのですか?」
「うん、なかった」

アツーサはカリムを抱いている父親に訊いている。父親も平山と同じことを答えたようだ。

「ミスター・平山。盗掘されてしまったのでしょうか?」
「さあ、分かりませんね。でも、はっきり言えることは、アーリマンの分身たちには渡っていないということでしょう」
「そうですね、それが今のところの救いです」

平山は、ミニ・シャトルなんて最初から存在していないんじゃないかという疑いを持ったが、アツーサの反応をみるとやはり存在していたようだ。

「ところで、彼らのトラックが来るとき、どうやって彼らに接近したの?」
「それは大変でした。命がけでした」
「いったいどうやったの?」
「ふふふ、それは内緒です」

平山たち4人は車で実家に戻った。無事なカリムをみたおばあちゃんの喜びは、それは大変なものだった。催眠から醒めた弁髪の男たちが悔しがっても、アツーサの実家に近寄ることはできない。再びひどい目に遭うだけなのだ。


(つづく)

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by elderman | 2007-11-06 00:00 | Comments(2)
2007年 11月 05日

遥かなる妄想 Part3(13)

誘拐犯の二人とも手に拳銃を持っていた。二人の男のうちの一人は、スピードガンを探しに行ったときに会った弁髪の男である。もう一人の男も同じ場所で会ったようだと平山は思った。弁髪の男がアツーサに向かって言った。

「よし、よくやった」
「これでいいでしょう。後はお好きにどうぞ」

平山には男とアツーサの会話の内容を理解できないが、洞窟の方を振り向くと、岩山に大きな穴が開いて、そこには平山が前に夢でみたことのある、あのミニ・シャトルがあった。鏡のような金属光沢を持って輝いている。

ミニ・シャトルは機体の全体が滑らかな曲線を描いていて、平べったい大きな石のように見えた。こちらに向いているのが前なのだろう、平山にはなんとなく分かった。窓らしいものはなく、入り口らしいものも見当たらなかった。こんなものが空を飛べるのだろうかと平山は思った。

平山がミニ・シャトルにみとれている暇はなかった。弁髪の男は、アツーサに拳銃をつきつけて平山たちに大声で命令した。

「そいつをトラックのところまで運べ」

ミニ・シャトルは台車の上に乗せられている。洞窟から移動させるのにはそれほどの力はいらなかった。アツーサの父親と二人で、台車の進む方向に注意しながらミニ・シャトルを移動させた。平山は、誘拐犯の男たちはミニ・シャトルをトラックに載せたら、自分たち全員を撃ち殺すつもりかも知れないと考えた。

生い茂る草木のせいで台車はうまく進まない。アツーサの父親が、大きなナイフで再び枝を払った。ナイフだって立派な武器だが、犯人はアツーサに拳銃をつきつけている。平山たちには抵抗する術がなかった。

平山はアツーサにミトラの能力があると思っていたが、拳銃の前では通用しないようだ。あるいは、誘拐犯がそれなりの防御方法をとっているのかも知れない。誘拐犯がわざわざ人質としてカリムを連れて来ているのはそのためだったのかも知れないと思った。

やっとのことで道路脇までミニ・シャトルを運ぶと、一人の男がトラックに行き、金属製のワイヤーを持って来た。トラックにはクレーンがつけられている。輪になったワイヤーをミニ・シャトルの前後にかけると、男はトラックの運転席に戻り、クレーンを操作し始めた。

ミニ・シャトルがトラックに積まれると、弁髪の男は、アツーサとカリム、アツーサの父親、平山の4人に一か所にまとまるように命令した。平山は、いよいよ拳銃で撃たれるかも知れないと思った。

しかし、弁髪の男は、そのままトラックに乗り込み、平山たち4人を残して去っていった。ミニ・シャトルは強奪されたが、カリムは無事に戻って来た。今は、アツーサの父親が孫のカリムを抱いていた。

(つづく)

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by elderman | 2007-11-05 00:00 | Comments(2)
2007年 11月 04日

遥かなる遺産 Part3(12)

「アツーサ、犯人の要求は?」
「隠した場所から外に出せという指示でした」
「そうか、ミニ・シャトルって大きいのでは?」
「いいえ、ミニ・シャトルですから、それほど大きいものではありません」
「そっか、夢のとおりなんだ・・・ それで、カリムは?」
「ミニ・シャトルを確認したら開放すると言っていました」

平山は、カリムが生きて帰るかどうかは五分五分だろうと思った。しかし、そんなことをアツーサに言うことはできない。引渡しの前にカリムを探し出して、なんとか救出しないといけない。

「では、こうしないか?お父さんと私が隠し場所に行く。アツーサは途中で犯人の追跡して来るのを待つというのはどうか?」
「見えないところから追いかけて来るでしょうね」
「そう、そこを隠れて待ち構える。犯人の姿を見れば、アツーサがなんとかできるのでは?」
「できるか、できないか、分かりません」
「それしかカリムを無事に助ける方法はないんじゃないか」
「失敗したら、カリムが危ない・・・」
「他にいい方法があるかい?」
「考えさせてください」

平山とアツーサ、そしてアツーサの父親の三人は車に乗り込んだ。車は20年くらい前の日本車だった。玄関では、アツーサの母親が心配そうな顔で三人を見送っていた。

車は国道をしばらく走り続けた。平山は、尾行して来る車がないかどうか後方を見たが、何台も走っているため国道ではよく分からない。車は左折して山道に入り、急停車した。この瞬間、アツーサは素早く車から降りた。車は、そのまま急いで走り出した。後ろから犯人に目撃されるのを避けるためである。

舗装されていない道路であった。後方は土埃が舞い上がるため、まったく見えない。前方には双子のような二つの岩山が見えて来た。高さは50mくらいだろうか、それほど大きな山ではない。山の下には草木があるが、上半分は禿山で岩肌が見えている。

車は山道でスピードを緩め、道路脇に止められた。そこからは歩くようだ。平山にはシャベルが持たされた。アツーサの父親は、大きな刀のようなものを持参していた。道がないので、樹木の枝を払いながら進んだ。ジャングルほどではないが、この地域は温帯性気候で緑が豊かである。

アツーサの父親は、平山の手からシャベルを取ると斜面を掘り始めた。よく見ていると、掘るというよりは、削るという感じだった。1,000年以上経っているのだろう、土と草木が堆積しているはずだ。それでも、表土は薄いようで、40cmくらいの厚さのようである。

やがて、シャベルはカツカツという岩に当たる音を立て始めた。その岩が露わになると、かなり平板なものであることが分かった。どうやら扉のようだ。しかし、それは小さく、とても宇宙船を運び込んだ入り口とは思えないものだった。扉が全部露出すると、アツーサの父親はそれを開けた。そこには通路があった。しかし、一人がやっと入れるくらいの大きさなのだ。

アツーサの父親が足からその中に入って行った。中は広いようだ。そして、平山を呼んだ。平山が同じようにして中に入ると、アツーサの父親が灯りを点けていた。壁にある松明のようだ。

しかし、洞窟の中には何もなかった。アツーサの父親は、驚愕を隠せないでいる。あるはずのものがないのだ。盗掘でもされたのだろうか。父親は、何もない空間をみつめていた。やがて、二人は仕方なく、入って来た通路から外に出た。父親は、諦めきれないかのように通路の入り口を見ている。

その時、トラックのような音が聴こえて来た。平山が音の方を見ると、二人の男とアツーサが接近して来る。そしてよく見ると、アツーサはカリムを抱いている。しかし、アツーサには弁髪の男の拳銃がつきつけられている。

(つづく)

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by elderman | 2007-11-04 06:39 | Comments(2)