えるだま・・・世界の国から

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2007年 12月 12日

遥かなる遺産 Part6(4)

平山は車の中で考えていた。岡野も同じグループに拉致されたのだろう。チャガタイのグループに違いない。あのグループにもっと仲間がいたとは思わなかった。アツーサのミトラの力を防ぐために同じサングラスをしているのが、何よりの証拠である。そして、アツーサは何もできないでいる。

しかし、三人を拉致してどうするのだろうか?ミニ・シャトル狙いなら、カスピ海方面に行くはずだが、車はどんどん西に向かっている。殺すなら、こんなところまで来なくてもいいようなものだが・・・

アツーサが言った「さっきの二人、特にナスリンの方ですけど、ちょっと臭います」というのがミトラの分身を意味しているとしたら・・・ 一体目的は何なんだ?

車が止まった頃には、周囲はすっかり暗くなっていた。平山とアツーサは車から降ろされた。平山は、いよいよこれまでかと思った。アツーサは無言のままである。

男たちの一人は、車のヘッドライトを当てたところの草をどかしてる。小さな扉が出て来た。まるでエレベータのような扉である。エレベータの押しボタンまでがある。

扉が開くと、4人は中に入った。こんなところにエレベータがあるとはいえ、周囲には何もないようなところであった。エレベータは下降を始めた。地下に行くようである。

エレベータでは距離感が分からないが、どうやら3階分くらい下降したようである。エレベータの扉が開くと、そこは洞窟の中だった。薄暗いが電灯による照明が付けられている。洞窟と言っても、単なる穴ではなく、どうやら鍾乳洞らしい。

平山とアツーサは命令されるままに歩いた。通路にはところどころ水が溜まっている。洞窟はかなり長く、先には大きな空洞があるようだ。地下水が溜まっている部分が見えた。全体は暗くて見えないが、大きな水溜りのようである。平山が思い出したのは、地底湖であった。ケルマンシャー州やハマダン州には地底湖があることを旅行のガイドブックで見たことがあった。

平山とアツーサは、鉄格子のある洞穴に入れられた。鉄格子の出入り口に鍵をかけると二人の男は立ち去った。

「アツーサ、大丈夫?」
「はい、なんとか・・・」
「殺されるのかと思ったけど、そうでもないみたい」
「そうですね。でも、どうして監禁するのでしょうね?」
「私たちに動かれては困るということか・・・」
「では、ミスター・岡野の失踪と関係があるのですね?」
「そうだろうなぁ」
「では、ミスター・岡野もここにいるということでしょうか?」
「その可能性はあるだろうな」
「では、どうして一緒にしないのでしょう?」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-12 03:54 | Comments(2)
2007年 12月 11日

遥かなる遺産 Part6(3)

平山の仕事は4時には終わってしまう。地方は2時半に終わるのだが、その代わりに土曜日も出勤しなければならない。テヘランの役所は週休二日が普通である。

帰ろうとしているところにアツーサの携帯に電話が入った。

「ミスター・平山。岡野さんが病院から消えたそうです」
「え?消えた?」
「いなくなったそうです」
「おかしいなぁ、退院の連絡はまだ受けていないのに」
「はい、退院ではありません」
「なに!失踪したというのか?」
「そのようです」

当惑しているのは、アツーサも平山と同様であった。平山がさらに訊いた。

「どうしてなんだ?」
「分かりません」
「もう、あのチャガタイなんていう連中はいなくなったというのに・・・」
「誘拐ですか?」
「しかし、何のために?ミニ・シャトルのことを知っている人はもういないだろう?」
「まさか・・・」
「アツーサ、心当たりがあるの?」
「病院で会ったあの怪しい二人・・・」
「彼女たちは、岡野さんの職場の仲間でしょ?」
「そうなんですが・・・」
「どうしたものか・・・ 大使館に連絡しないと・・・」

平山は、日本大使館の担当書記官に電話を入れた。平山としては、心当たりがないので岡野の失踪のことだけを伝えた。大使館からの連絡を待つしかないようだ。

平山とアツーサは、いつものように職場のゲートを抜けて、アライーの運転する車のところに向かった。アライーは用足しでもしているのか、姿が見られなかった。直ぐに戻るだろうと思い、車のところで待っていると、脇に止まっていた車からサングラスをかけた二人の男が降りて来た。

「こっちの車に乗ってもらおう」

二人の男たちは平山たちに拳銃を向けていた。平山とアツーサは、サマンドの後部座席に乗せられた。男の一人は運転席へ、もう一人は助手席から平山とアツーサに拳銃を向けている。平山は小声でアツーサに言った。

「アツーサ、この男たち、チャガタイのグループかも?」
「うるさい、黙れ!」

と拳銃を向けている男が叫んだ。車は、テヘランから西の方向にどんどん進んだ。目隠しをしないところをみると、殺す気なのではないかと平山は思った。しかし、車はカラジを過ぎ、さらに西に進んだ。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-11 00:46 | Comments(0)
2007年 12月 10日

遥かなる遺産 Part6(2)

いろいろなことがあったが、平山のイランでの2年の任期はもう直ぐ終わろうとしていた。日本からは平山の後任が派遣されることになっている。平山の仕事は終わった訳ではないが、遺した仕事は後任の人にやってもらうしかない。相手のある仕事である。平山だけが頑張ってもしょうがないのである。

平山とアツーサは、マジディ部長のオフィスに行って、紅茶をすすりながら話をしている。

「ドクター・マジディ。イランはどうして原子力発電が必要なのでしょうか?石油だけでなく天然ガスだって豊富にあるというのに」
「石油は輸出用に回したいのさ」
「なるほど、天然ガスの輸出には設備が大変だから、石油を輸出専用にですか?」
「そういうことだね」
「核兵器の開発についてはどう思います?」
「開発していると思うよ」
「え?そうなんですか?」
「いろいろな考えの人たちがいるからなぁ」
「国際的には核の平和利用だけだと説明していますけど」
「表向きはそうだが・・・」

平山はマジディ部長の推測だろうと思った。平山も核アレルギーというものを持つ日本人である。日本には多くの原子力発電所が稼動しているという事実にもかかわらずである。

平山には分からないことがあった。どうして、イランの現政権がイスラエルを敵視するのかということである。歴史的にはユダヤ人とは仲良くやって来ているのだ。ホメイニ師が敵視したらしいのだが、イラン人はアラブ人ではない。どうして、イスラエルという国を敵視するのだろうか。

平山は、強いて勘繰ると、イランという国はいまだに大国意識があり、中東という地域でリーダーという役割を意識しているのかも知れないと思った。アラブ人はイスラム教徒でもスンニ派であり、イランはシーア派という違った宗派である。シーア派は少数派だが、イランだけでなく、イラクにもアフガニスタンにもシーア派のイスラム教徒はいる。

しかし、どうしてイランがシリアやパレスチナに援助するのか、その理由が分からないのである。テヘランで特別な警察を見掛けることがある。メルセデスベンツのパトカーに乗っている警察官であり、一目で分かる。アツーサの話では、シリア方面で仕事をし、帰国した人たちだという。

テヘランでは、たまに特定の地区でデモがあるが、普段は大変治安がいい。多くの日本人が思っているような物騒な場所ではない。もっとも、地域によっては外国人を拉致する犯罪グループがあるということで、旅行を差し控えないといけない場所もあることも事実ではあるのだが。

ハジハディが隣の市のカラジから来ている女性職員に研修を行っている。平山はその様子を見て、必要な指導を行うべく、マジディ部長のオフィスを出て、ラボラトリーに向かった。平山は、イラン人による技術指導体制を固めておくことが何よりも肝心だと思っている。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-10 02:53 | Comments(2)
2007年 12月 09日

遥かなる遺産 Part6(1)

平山はアツーサと一緒に岡野のいる病院に向かっていた。岡野は大分回復していて、退院はもう直ぐのようだった。

「なぁ、アツーサ、岡野に乗り移っていたアーリマンのスピリットはどうなったんだろう?」
「消滅はしないはずですけど」
「そうか、やっぱり心配だな」
「普段の状態ではアーリマンが現れることはないと思いますけど、何か特別なことが起きたらと思うと心配です」
「アツーサの力でなんとかできないの?」
「できません・・・ ただ・・・」
「ただ?」
「いいえ、何でもありません。気にしないでください」
「気になるなぁ」
「岡野さんが生きている限りという意味です」
「ああ、そうか。死んでしまえば、アーリマンのスピリットが出て行くということか」

平山の危惧はやはり当たっているようだ。アーリマンが現れると、もはや岡野自身ではない。そして、アツーサにはどうにもできないという。

車が病院に着くと、平山とアツーサは岡野の病室に直行した。イランの病院には面会時間というのはないようだった。アツーサのご主人が事故で入院したとき、アツーサが徹夜で看病したという、日本の完全看護の病院だと親族でも付き添うことができないのが普通だというのに。

岡野の病室に着くと、二人の女性の先客がいた。岡野の職場の人たちだと紹介された。役所で働いている女性らしく黒いチャドルを着ている。アツーサはチャドルが嫌いだといい、マント言われる薄手のコートを着ている。

平山たちが来たことで、二人の女性たちは岡野に別れを告げた。岡野のカウンターパートはダルヴィシュという女性で、もう一人はその部下のナスリンだと言った。二人は、平山たちに挨拶をして部屋を出て行った。平山は、二人の女性を物静かな人たちだと思った。

「平山さん、アツーサ、お見舞いありがとう。でも、もう直ぐ退院できるんだ」
「それは良かった」
「また飲めるようになるのが楽しみだ」
「そうだね、病院では無理だものな」

岡野は完全に以前の岡野に戻っていた。平山はアーリマンのスピリットのことを岡野に話す気にはなれず、世間話に終始した。

小一時間を岡野の病室で過ごすと、平山とアツーサは岡野に別れを言った。

「岡野さん、退院の日程について決まったら電話してくださいね」
「よろしくお願いします」
「お大事に」とアツーサ。
「ホダーハーフェズ」と岡野がペルシャ語で別れを言った。

平山とアツーサは静かに病室を出た。病院を出ると、アツーサが言った。

「ミスター・平山。さっきの二人、特にナスリンの方ですけど、ちょっと臭います」
「え?臭うって?」
「私と同類のような気がするのです」
「え?ミトラの分身ってこと?」
「さあ、そこまでは分かりませんけど、ちょっと臭うんです」
「アツーサのような女性が他にもいるなんて・・・」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-09 08:45 | Comments(0)
2007年 12月 08日

遥かなる遺産 Part5(17)

「平山さん、アツーサは?どこに行ったの?」
「今、航空関係コンプレックスに行っている。やることがあるんだ」
「そうか、そうだろうな」
「シャフィプール大佐が騒ぎ出したら面倒だからね」

岡野は、病室で安静にしている。墜落のショックでかなりの打撲があったが、命に別状はないということだった。

「平山さん、悪かったな」
「いや、あれは岡野さんじゃなかったさ。アーリマンが乗り移っていたってアツーサが言っていた」
「そうでもないと思うよ。あれも俺自身さ」

岡野は、自分のやったことを自嘲気味に振り返っていた。

「でも、平山さん、あの宇宙船、よく動かせたね」
「ああ、アツーサが調べてくれたんだ」
「すごいね、やっぱり魔女だな」
「彼女には、言葉は重要ではないみたいで、イメージでそのまま伝達できるようなんだ」
「そうなのか。やっぱり、すごいな」
「少し怖いかな」と平山が微笑みながら言った。

そうしていると、アツーサが病室に入って来た。

「ミスター・岡野。大丈夫ですか?」
「ああ、もう大丈夫です。いろいろありがとう」
「いいえ」
「いろいろと迷惑を掛けてしまった」
「気にしないでください」

平山とアツーサは、「岡野にまた来る」と言って病室を後にした。すると、アツーサが平山に言った。

「ミスター・平山、あの時、私はミスター・岡野を本気で殺したいと思いました」
「そうだろうな、それがミトラの欠点じゃないかな」
「知っていたのですか?」
「うん」

平山は、自分の捜し求めていたもの、つまり、戦争を避けることのできる知恵と言えるもの、善神と悪魔とを上手くコントロールできたというズールワン神の力がどういうものか、少しだけ分かったような気がしているのだった。

歴史的には、ミトラが霊あるいは精神を司り、それが善として扱われ、一方アーリマンが物質あるいは科学技術を司りながら、それが悪として扱われて来たが、そもそも善も悪もない。どちらかが強過ぎると弊害があるというもので、その両者を正しく認識できる力、それが第三の力であり、スルガ艦長の後継たるマツダの真の能力だと思えるのだった。



ロシアの新聞では、カスピ海上空でUFOが目撃されたと報じられたが、米国かロシアの新兵器だろうということでほとんど注目されなかった。

そして、あの宇宙船は今でもカスピ海の底に眠っている。ミニ・シャトルは、アツーサの家の庭にあるかも知れない。

(Part5 おわり)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-08 01:14 | Comments(4)
2007年 12月 07日

遥かなる遺産 Part5(16)

岡野の操縦するミニ・シャトルは逃げる。アツーサが叫んだ。

「大変、ロシアに売り渡す気のようです」
「こんな技術が、今の世界にもたらされたら大変だ・・・」
「ミスター・平山、破壊してください。そうしないと多くの人が死ぬことになります」
「しかし、岡野さんが・・・」
「もう時間がありません。他に方法がないでしょう!」

平山は、しかたなく、レーザー砲を使うことにした。

「岡野、死ぬなよ!」

レーザーガンのビームとは比較にならないほど強力なレーザービームがミニ・シャトルに照射された。レーザービームを受けたミニ・シャトルはキリモミ状態になり、コントロールを失い、下降し始めた。

「まずい、大丈夫だろうか・・・」

ミニ・シャトルは、緑の大地に向かって墜ちていく。

「岡野!岡野!姿勢を直せ!」

平山の必死の叫びは、岡野を気づかせたようだ。ミニ・シャトルは少し態勢を立て直したようだったが、麦畑に向かって突っ込んで行った。



平山がミニ・シャトルのドアを開けた。コクピットに行くと、岡野が気を失っていた。岡野のかけていたサングラスは粉々になって落ちていた。

「おい!岡野!大丈夫か?」
「ミスター・岡野!アー・ユー・オーケー?」
「岡野!しっかりしろ!」

平山に揺すられたせいか、岡野が気を取り戻した。

「うう、どうしたんだ?」
「墜落したんだ」
「墜落・・・・」

平山とアツーサは、ふらふらしている岡野を宇宙船に運ぶと、次にミニ・シャトルを格納した。幸い、ミニ・シャトルはまだ壊れていないように見えた。レーザービームでコントロールを失っただけのようだ。

「さあ、誰かが来る前に退散だ!」

宇宙船は静かに上昇し、再びカスピ海の方向に飛び去った。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-07 07:17 | Comments(2)
2007年 12月 06日

遥かなる遺産 Part5(15)

平山は、コントロールパネルのあちこちをいじってみた。しかし、宇宙船はうんともすんとも言わない。いったいどうやってパワーを”ON”にするというのだ。あの研究心の強い岡野が諦めたほどのこと、平山にできるとは思えなかった。

しばらくするとアツーサが戻って来た。平山は、やはりダメだったろうという表情でアツーサを見ると、アツーサの目が燃えていた。平山がアツーサのそんな目を見るのは初めてだった。

「ミスター・平山、私の目を見てください」

アツーサの言葉は否応なしの命令だった。その直後、平山は少し眩暈を覚えた。アツーサが続けて言った。

「さあ、もう宇宙船を操縦できるはずです」
「え?そんな・・・」

平山はアツーサの能力を知っているだけに半信半疑だったが、言葉に従い、目をつむり、心を無にするように努力した。私は・・・ マツダ・・・

平山は、パスワードを入力するとパワーを”ON”にした。宇宙船は死んではいなかった。コクピットの計器類にライトが点った。平山が叫んだ。

「アツーサ、シートについて!反重力装置始動!」

宇宙船は、静かに浮上を始めた。

「やったね!壊れていたのは、恒星間移動用のメイン・エンジンだったようだ」
「ミスター・平山、やっぱりね」
「アツーサには、『やっぱり』なのか・・・ でも、いいや。さあ、行くぞ!」

宇宙船は静かに水面まで浮上した。いや、水面以上の高さまで浮上した。

「ミニ・シャトルはどこかな?あ、これか」

パネルの表示板の一つが、岡野の操縦するミニ・シャトルの位置を示していた。まだ飛行中のようだ。

「岡野さん、どこに行く気なのだろう?」
「ミスター・平山、追いかけて!」
「ああ、そうするとも!」

宇宙船は、大きな加速度でミニ・シャトルを追いかけ始めた。ミニ・シャトルの移動速度とは比べものにもならないほど高速である。ミニ・シャトルは、あっという間に至近距離になった。カスピ海を抜け、ロシアの領地に入るところだった。

「待て!岡野!」
「いったいどうやって動かしたんだ・・・」

(つづく)

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by elderman | 2007-12-06 05:35 | Comments(0)
2007年 12月 05日

遥かなる遺産 Part5(14)

岡野はミニ・シャトルで行ってしまった。宇宙船に残された平山は、まだ起きたことが信じられないでいた。アツーサが口を開いた。

「ミスター・平山、ミスター・岡野はアーリマンのスピリットに乗っ取られたみたいですね」
「そんなことがあるものか」
「あの有馬という人が死んで、乗り換えたんじゃないでしょうか?」
「アツーサもミトラに乗っ取られているのかい?」
「まさか・・・、でも、ある意味では、そうかも知れません・・・」
「精神科学でいうとそうなるのか?私が思うに、岡野さんには、もともとそういう資質があったんじゃないかな」

平山は、岡野がこれまでに言ったことを思い出した。

「イランって悪の枢軸なんて言われているけど、世の中に悪がなくなったらどうなんでしょう?」
「楽をして儲けたい・・・なんて悪だと思うけど、そういう動機があるから技術が進歩したのでは?」
「戦争で多くの敵兵を殺したら、ヒーローになって勲章がもらえるでしょ」
「うーん、悪という部分も必要な要素なんじゃないかって気がするってことなんだけど・・・」

アツーサのことを見破ったのは岡野であり、魔女と言ったのも岡野だった。

平山は思う。しかし、今、そんなことを考えていてもしょうがない。400mの水深のところから脱出しなければいけないのだ。400mの水深というのは40気圧になる。どんな圧力かも想像できないし、それに耐えられたとしても、水面に達したら、目玉が飛び出してしまうかも知れない。

船内は少し息苦しい、宇宙人に合わせた空気の組成なのだろう。大きな宇宙船だから、窒息死するには相当時間が掛かるだろう。それなら、飢え死にの方が先に来るはずだ。

「アツーサ、さあ、どうするか?」
「この宇宙船ってエンジン故障しているけど、完全に動かないのでしょうか?」
「動かそうというのか?」
「やってみる価値はあるのでは?」

平山は、岡野は動かそうとしていたのかも知れないと思った。それがダメだから、ミニ・シャトルで逃げ出したのかも知れない。だから、あれほど自信たっぷりに「ここで死んでもらおう」なんて言ったのだろう。

ともあれ、他に手はないようだと、平山は操縦席に座った。ミニ・シャトルを操縦できるのは夢のせいだったが、宇宙船を操縦した夢はみたことがない。夢では、アリマが操縦していたのだった。

平山は、いろいろやってみた。多分、岡野もそうしたのだろうと思った。

「ミスター・平山、ホログラフィを調べて来ます」

アツーサは、ホログラフィのある部屋に行ってしまった。平山は、言葉が分からない状態で手掛かりが得られるとは思えなかった。

(つづく)

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by elderman | 2007-12-05 00:22 | Comments(2)
2007年 12月 04日

遥かなる遺産 Part5(13)

果てしなくホログラフィを見ていたい気分の平山だったが、意味が分からないのが辛いところだった。じっくり時間を掛けて見ればいろいろなことが分かってくるだろうと思った。平山は、岡野にも見せたいと思った。

「岡野さん、ホログラフィが見られるよ」

コクピットが近いので、少し声を大きくして叫んだ。しかし、岡野からの返事はなかった。

「岡野さーん、すごいよー!」
「どうしたのかしら?」
「何か夢中になるものでもみつけたのかな?」

平山とアツーサはコクピットに戻って行った。岡野は、そのままコクピットに座っていた。

「岡野さん、面白いものをみつけたの?」

岡野が立ち上がって振り向いた。サングラスをかけている。そして、低い声で言った。

「俺は、この宇宙船をもらうことにした」
「え?どういうこと?」
「この宇宙船は、お宝だよ」
「それはそうだよ。人類が平和に暮らせる知恵があるかも知れない」
「そんなことはどうでもいいことだ」
「おまえたちには、価値が分からないのだろう。一生贅沢をして暮らせるだけの金になる」
「岡野さん、いったい何を言っているんだ?」

アツーサが言った。

「ミスター・岡野、そのサングラス、どうしたのですか?」
「おまえたちが邪魔なんだよ」と、岡野。

岡野の手には拳銃があった。

「おまえたちには、ここで死んでもらおう」
「え?」
「ここに残れと言っているんだ」

岡野は、拳銃を平山とアツーサに向けたまま、コクピットを出て行こうとしている。

「動くな、そこにそうしていろ」
「岡野さん」
「飢え死にした頃、チョウザメの餌にしてやるよ」
「・・・」
「時間のある限り、せいぜい平和でも研究していればいいさ」

岡野はミニ・シャトルに乗り込んだ。本当に二人を置き去りにするつもりらしい。

(つづく)

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by elderman | 2007-12-04 02:40 | Comments(0)
2007年 12月 03日

遥かなる遺産 Part5(12)

平山は、図書室のようなものがないか、宇宙船の中を探そうと考えた。岡野は興味深そうに、コクピットでいろいろなものを調べている。

「ちょっと図書室を探してみる」

平山は、そう言ってコクピットを出ると、アツーサもついて来た。アツーサはコクピットに興味はないようだ。平山は、宇宙人の図書室なんて想像を超えているが、覗いてみれば見当がつくかも知れないという期待を持っていた。

コクピットに近い場所の各部屋にはドアのようなものが見られなかった。平山が会議室のようにみえる部屋に入ると、コクピットに入ったときと同じように室内が少し明るくなった。中央には床から生えているような丸テーブルがあり、周囲には椅子が設置されている。それで、平山には会議室にみえたのだ。

しかし、よく見ると丸テーブルは椅子から離れているため、飲み物などを置くところには見えない。平山が椅子に座ってみると、前に手を伸ばすと丁度カウンターのようなテーブルがあり、表面がデコボコしている。平山は直感的に何かの操作をするためのボタンが並んでいると思った。適当に触ってみると、丸テーブルの上が光り、何かが現れた。

「アツーサ、すごい!これはホログラフィだ!」
「わぁ、きれい!でも、何ですか、これ?」
「何だろうねぇ、何かの像みたいだけど、何だろう?」

ホログラフィは、その像のようなものをどんどん小さくしていった。像は建物の上にあるもののようである。

「あ、これって組織の説明みたい」

平山は、どこかの会社や国の機関のホームページを開いたような感じを持った。

「空が青いや。地球のような惑星みたいだ」
「雲もありますね」

ホログラフィは建物の入り口をアップにしている。そして、記号のようなものが次々に現れた。

「アツーサ、これは文字かも知れない」
「文字みたいですね」

平山は、少しがっかりした。宇宙人の文字の解読なんて気が遠くなるほどの年数が必要に思えるのだ。

「あ、宇宙人だ」
「これが宇宙人の姿なんですか・・・」

美しい衣装をまとい、二足歩行をしている。アツーサが叫んだ。

「あ!顔がみえる」
「人間と同じようだけど、つるりとして気持ち悪いな」

ホログラフィに顔がアップになった。何かを話しているようだが、まったく聞いたことのない言語だと平山は思った。

(つづく)

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by elderman | 2007-12-03 02:23 | Comments(2)