えるだま・・・世界の国から

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2007年 12月 13日

遥かなる遺産 Part6(5)

人の声が聴こえて来た。鉄格子の向こうに現れたのは、ダルヴィシュとナスリンだった。ナスリンが口を開いた。ダルヴィシュはサングラスをしている。

「お二人さん、そこでずっと大人しくしていてね」
「ミスター・岡野は無事でしょうか?」とアツーサが訊いた。
「ああ、まだ生きているよ」とナスリン。
「私たちを解放してください」
「それはダメだね。面倒なことになる」

とナスリンが言うと、ダルヴィシュが低い声でナスリンに言った。

「余分なことは言わないことよ」
「じゃぁね、食べ物はちゃんと与えるから、大人しくしてなさいね」

二人は身を翻すと去って行った。平山には、二人の黒いチャドルが魔女のマントのように見えた。

「アツーサ、何を話していたの?」
「私たちを殺す気はないみたいだけど、ずっとここにいなさいですって」
「私たちに何かをやらせる気なのかな?」
「閉じ込めておくことが目的のようでした」
「それは変だなぁ・・・ 殺せば簡単だろうに・・・」
「ミスター・岡野は無事のようです」
「どういうことなんだ?」
「まだ生きていると言ってました」

平山が耳を澄ますと、洞窟の奥から機械の音が聴こえて来た。どうやら、この洞窟の中には工場のようなものがあるようだと平山は思った。

「あ!アツーサ、ひょっとして・・・」
「どうしたのですか?」
「殺さない理由というのは、アツーサのミトラの能力を封じ込めるためじゃないかな?」
「え?」
「殺してしまったら、ミトラはアーリマンと同じようにまた誰かを探すだろう?」
「それが『面倒なことになる』という意味ですか」
「そういうことじゃないかな」
「なるほど、閉じ込めておけば、力が封印できるということですね」

平山は、ここまで考えて、また疑問が浮かんだ。

「では、どうして岡野さんは殺されるのだろうか?」
「『まだ生きている』という意味ですか?」
「うん。まさか、岡野さんのアーリマンの能力がほしいというのか」
「じゃぁ、ミスター・岡野は殺されるのでしょうか?」
「そうかも知れない。でも、どうして直ぐに殺さなかったのだろうか・・・」
「・・・」
「考えられることは一つだな。ダルヴィシュがその能力をほしがっているのかも知れない」
「それがどうして直ぐに殺さないということになるのでしょうか?」
「殺す前にいろいろやってみるんじゃないかな。だって、岡野が死んでもアーリマンがダルヴィシュに憑依するかどうかは分からないだろう。殺すのは最後の手段じゃないかな」
「じゃぁ、ミスター・岡野、これから拷問に合うのかも・・・」
「岡野さんを助けないと。でも、その前に自分たちだ」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-13 05:44 | Comments(0)


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