えるだま・・・世界の国から

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2007年 12月 11日

遥かなる遺産 Part6(3)

平山の仕事は4時には終わってしまう。地方は2時半に終わるのだが、その代わりに土曜日も出勤しなければならない。テヘランの役所は週休二日が普通である。

帰ろうとしているところにアツーサの携帯に電話が入った。

「ミスター・平山。岡野さんが病院から消えたそうです」
「え?消えた?」
「いなくなったそうです」
「おかしいなぁ、退院の連絡はまだ受けていないのに」
「はい、退院ではありません」
「なに!失踪したというのか?」
「そのようです」

当惑しているのは、アツーサも平山と同様であった。平山がさらに訊いた。

「どうしてなんだ?」
「分かりません」
「もう、あのチャガタイなんていう連中はいなくなったというのに・・・」
「誘拐ですか?」
「しかし、何のために?ミニ・シャトルのことを知っている人はもういないだろう?」
「まさか・・・」
「アツーサ、心当たりがあるの?」
「病院で会ったあの怪しい二人・・・」
「彼女たちは、岡野さんの職場の仲間でしょ?」
「そうなんですが・・・」
「どうしたものか・・・ 大使館に連絡しないと・・・」

平山は、日本大使館の担当書記官に電話を入れた。平山としては、心当たりがないので岡野の失踪のことだけを伝えた。大使館からの連絡を待つしかないようだ。

平山とアツーサは、いつものように職場のゲートを抜けて、アライーの運転する車のところに向かった。アライーは用足しでもしているのか、姿が見られなかった。直ぐに戻るだろうと思い、車のところで待っていると、脇に止まっていた車からサングラスをかけた二人の男が降りて来た。

「こっちの車に乗ってもらおう」

二人の男たちは平山たちに拳銃を向けていた。平山とアツーサは、サマンドの後部座席に乗せられた。男の一人は運転席へ、もう一人は助手席から平山とアツーサに拳銃を向けている。平山は小声でアツーサに言った。

「アツーサ、この男たち、チャガタイのグループかも?」
「うるさい、黙れ!」

と拳銃を向けている男が叫んだ。車は、テヘランから西の方向にどんどん進んだ。目隠しをしないところをみると、殺す気なのではないかと平山は思った。しかし、車はカラジを過ぎ、さらに西に進んだ。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-11 00:46 | Comments(0)


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