えるだま・・・世界の国から

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2007年 12月 09日

遥かなる遺産 Part6(1)

平山はアツーサと一緒に岡野のいる病院に向かっていた。岡野は大分回復していて、退院はもう直ぐのようだった。

「なぁ、アツーサ、岡野に乗り移っていたアーリマンのスピリットはどうなったんだろう?」
「消滅はしないはずですけど」
「そうか、やっぱり心配だな」
「普段の状態ではアーリマンが現れることはないと思いますけど、何か特別なことが起きたらと思うと心配です」
「アツーサの力でなんとかできないの?」
「できません・・・ ただ・・・」
「ただ?」
「いいえ、何でもありません。気にしないでください」
「気になるなぁ」
「岡野さんが生きている限りという意味です」
「ああ、そうか。死んでしまえば、アーリマンのスピリットが出て行くということか」

平山の危惧はやはり当たっているようだ。アーリマンが現れると、もはや岡野自身ではない。そして、アツーサにはどうにもできないという。

車が病院に着くと、平山とアツーサは岡野の病室に直行した。イランの病院には面会時間というのはないようだった。アツーサのご主人が事故で入院したとき、アツーサが徹夜で看病したという、日本の完全看護の病院だと親族でも付き添うことができないのが普通だというのに。

岡野の病室に着くと、二人の女性の先客がいた。岡野の職場の人たちだと紹介された。役所で働いている女性らしく黒いチャドルを着ている。アツーサはチャドルが嫌いだといい、マント言われる薄手のコートを着ている。

平山たちが来たことで、二人の女性たちは岡野に別れを告げた。岡野のカウンターパートはダルヴィシュという女性で、もう一人はその部下のナスリンだと言った。二人は、平山たちに挨拶をして部屋を出て行った。平山は、二人の女性を物静かな人たちだと思った。

「平山さん、アツーサ、お見舞いありがとう。でも、もう直ぐ退院できるんだ」
「それは良かった」
「また飲めるようになるのが楽しみだ」
「そうだね、病院では無理だものな」

岡野は完全に以前の岡野に戻っていた。平山はアーリマンのスピリットのことを岡野に話す気にはなれず、世間話に終始した。

小一時間を岡野の病室で過ごすと、平山とアツーサは岡野に別れを言った。

「岡野さん、退院の日程について決まったら電話してくださいね」
「よろしくお願いします」
「お大事に」とアツーサ。
「ホダーハーフェズ」と岡野がペルシャ語で別れを言った。

平山とアツーサは静かに病室を出た。病院を出ると、アツーサが言った。

「ミスター・平山。さっきの二人、特にナスリンの方ですけど、ちょっと臭います」
「え?臭うって?」
「私と同類のような気がするのです」
「え?ミトラの分身ってこと?」
「さあ、そこまでは分かりませんけど、ちょっと臭うんです」
「アツーサのような女性が他にもいるなんて・・・」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-12-09 08:45 | Comments(0)


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