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えるだま・・・世界の国から

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2007年 12月 08日

遥かなる遺産 Part5(17)

「平山さん、アツーサは?どこに行ったの?」
「今、航空関係コンプレックスに行っている。やることがあるんだ」
「そうか、そうだろうな」
「シャフィプール大佐が騒ぎ出したら面倒だからね」

岡野は、病室で安静にしている。墜落のショックでかなりの打撲があったが、命に別状はないということだった。

「平山さん、悪かったな」
「いや、あれは岡野さんじゃなかったさ。アーリマンが乗り移っていたってアツーサが言っていた」
「そうでもないと思うよ。あれも俺自身さ」

岡野は、自分のやったことを自嘲気味に振り返っていた。

「でも、平山さん、あの宇宙船、よく動かせたね」
「ああ、アツーサが調べてくれたんだ」
「すごいね、やっぱり魔女だな」
「彼女には、言葉は重要ではないみたいで、イメージでそのまま伝達できるようなんだ」
「そうなのか。やっぱり、すごいな」
「少し怖いかな」と平山が微笑みながら言った。

そうしていると、アツーサが病室に入って来た。

「ミスター・岡野。大丈夫ですか?」
「ああ、もう大丈夫です。いろいろありがとう」
「いいえ」
「いろいろと迷惑を掛けてしまった」
「気にしないでください」

平山とアツーサは、「岡野にまた来る」と言って病室を後にした。すると、アツーサが平山に言った。

「ミスター・平山、あの時、私はミスター・岡野を本気で殺したいと思いました」
「そうだろうな、それがミトラの欠点じゃないかな」
「知っていたのですか?」
「うん」

平山は、自分の捜し求めていたもの、つまり、戦争を避けることのできる知恵と言えるもの、善神と悪魔とを上手くコントロールできたというズールワン神の力がどういうものか、少しだけ分かったような気がしているのだった。

歴史的には、ミトラが霊あるいは精神を司り、それが善として扱われ、一方アーリマンが物質あるいは科学技術を司りながら、それが悪として扱われて来たが、そもそも善も悪もない。どちらかが強過ぎると弊害があるというもので、その両者を正しく認識できる力、それが第三の力であり、スルガ艦長の後継たるマツダの真の能力だと思えるのだった。



ロシアの新聞では、カスピ海上空でUFOが目撃されたと報じられたが、米国かロシアの新兵器だろうということでほとんど注目されなかった。

そして、あの宇宙船は今でもカスピ海の底に眠っている。ミニ・シャトルは、アツーサの家の庭にあるかも知れない。

(Part5 おわり)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。

by elderman | 2007-12-08 01:14


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