2007年 12月 01日
平山たちが、ミニ・シャトルに被せられた堆肥を除けていると、坊主頭が言った。 「さあ、これからどうするか・・・ 誰がミニ・シャトルを動かせるのかな?」 平山たちは、誰も答えずにいた。 「バーン」、拳銃が発砲されたのだ。 鼓膜が痛くなるほどの大きな音だった。 「私です」、平山が答えた。 「よし、素直にしていないと、次は誰かが犠牲になるぞ」 「私は何をすればいいのでしょうか?」、平山が訊いた。 「それには何人が乗れるだ?」 「3人です」 「3人しか乗れないのか・・・」 坊主頭は、ミニ・シャトルに搭乗できる人数を知らなかったのだ。沈黙が続いた。 「まあ、いい。すべては明日だ。みんな家に入れ」 ミニ・シャトルはそのままで、坊主頭の部下の一人を残して全員が家の中に入った。 平山たちは、平山が以前宿泊した部屋に入れられた。アツーサの両親もその部屋にいた。アツーサは両親に飛びつき、無事を喜んだ。 しばらくすると、部屋のドアが開けられ、ナンと水の入ったペットボトルが放り込まれた。夕食はこれだけで済ませろということらしい。窓から逃げ出そうとしても、そこには鉄格子があるし、外には見張りがいる。 「これは参ったなぁ」、岡野が小声で言った。 「頼りのアツーサが無力ではどうにもならない」、平山はため息をついた。 部屋に閉じ込められた5人がナンを分けていると、突然の銃声が聴こえた。同時に外で悲鳴が上がった。直後、誰かが家に押し込んで来たようだ。家の中で大きな銃声が何発も聴こえた。アツーサと両親は抱き合っていた。平山も岡野も生きた心地がしない。 5人のいる部屋のドアが乱暴に開けられた。平山は撃たれると思ったが、そこで銃声は鳴り止んだ。ドアにいる男がペルシャ語で命令しているようだ。アツーサが通訳をした。 「軍隊です。サングラスの男たちは全員殺されました。部屋から出るようにと言っています」 平山は、「敵が変っただけか、一難去ってまた一難」と思ったが、今度は前と事情が違う。それにしても、あっけないアリマだとも思った。 リビングルームに出ると、サングラスの男たちが血まみれになって倒れていた。アツーサは、兵隊が集まると、直ぐにミトラの力を使い、兵隊たちに死体を片付けさせた。作業を終えると、兵隊たちは何事もなかったように引き上げて行った。 (つづく) (注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
by elderman
| 2007-12-01 00:53
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海外在住13年余、渡航国数は40か国です。海外在住と海外旅行の記事、世界の花の写真、エッセイなど盛りだくさんです。現在は日本在住です。★お気楽にコメントをいただければ大変嬉しく思います。 by elderman カレンダー
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