えるだま・・・世界の国から

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2007年 11月 30日

遥かなる遺産 Part5(9)

平山、岡野とアツーサの三人は、アライーの車でアルボルズ越えの最中である。地震の復旧作業のためだろう、普段より交通量が多い。トラックが山道を行くため、スムースには走れない。乗用車は、車幅のある道路に出ると、のろのろ走るトラックを抜いて行く。

軍隊の車列が前にも後ろにも見られる。平山は、こちらも被災地に向かうのだろうと思った。途中2か所で山崩れがあったことが認められたが、地震の復旧作業のためにだろう、既に通行可能になっていた。

アツーサの実家に到着したときには、すっかり暗くなっていた。アツーサが携帯電話で、実家に電話をしたが誰も出なかった。家に近づくと、門が開いている。アライーは、そのまま玄関まで車を進めた。

玄関で待ち受けていたのは、アツーサの両親ではなく、3人のサングラスの男たちだった。

「平山さん、やばいぞ、やつら拳銃を持っている」

サングラスの男の一人が車に接近して来て、拳銃を向けながら日本語で言った。

「おとなしく降りろ、さもないとジジイとババアの命がないぞ」
「バーバ!」、アツーサが叫んだ。「バーバ」はペルシャ語でお父さんということだ。

平山は、不思議だった。こういうことなら、アツーサには何でもないだろうと思っていたからだ。しかし、アツーサは何もしないでいる。

「どうしたんだ、アツーサ?」
「彼ら、例のプロテクターをつけています」

平山には、ようやく事情が飲み込めた。男たちはアツーサの催眠術を防ぐため、夜にも拘わらず、特殊なサングラスをしているのだ。アリマと呼ばれている坊主頭の男が太い声で言った。

「平山さんと言ったな、ミニ・シャトルを出してもらおうか」
「・・・」
「言うことをきかないと、アツーサの両親の命がないぞ」
「分かった。ちょっと待ってくれ。今、アツーサに聞くから」
「早くするんだな、俺は気が短いんだ」

平山は、アツーサの方を向いて訊いた。

「ミニ・シャトルを渡すしかないようだ」
「はい」
「どこに隠してあるの?」
「あの堆肥です」

アツーサの指したところは、庭の草木、野菜のための堆肥を置いてある場所だった。こんもり盛り上がったところだが、車二台分の大きさのミニ・シャトルが隠れているようには見えなかった。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-11-30 08:05 | Comments(0)


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