えるだま・・・世界の国から

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2007年 11月 04日

遥かなる遺産 Part3(12)

「アツーサ、犯人の要求は?」
「隠した場所から外に出せという指示でした」
「そうか、ミニ・シャトルって大きいのでは?」
「いいえ、ミニ・シャトルですから、それほど大きいものではありません」
「そっか、夢のとおりなんだ・・・ それで、カリムは?」
「ミニ・シャトルを確認したら開放すると言っていました」

平山は、カリムが生きて帰るかどうかは五分五分だろうと思った。しかし、そんなことをアツーサに言うことはできない。引渡しの前にカリムを探し出して、なんとか救出しないといけない。

「では、こうしないか?お父さんと私が隠し場所に行く。アツーサは途中で犯人の追跡して来るのを待つというのはどうか?」
「見えないところから追いかけて来るでしょうね」
「そう、そこを隠れて待ち構える。犯人の姿を見れば、アツーサがなんとかできるのでは?」
「できるか、できないか、分かりません」
「それしかカリムを無事に助ける方法はないんじゃないか」
「失敗したら、カリムが危ない・・・」
「他にいい方法があるかい?」
「考えさせてください」

平山とアツーサ、そしてアツーサの父親の三人は車に乗り込んだ。車は20年くらい前の日本車だった。玄関では、アツーサの母親が心配そうな顔で三人を見送っていた。

車は国道をしばらく走り続けた。平山は、尾行して来る車がないかどうか後方を見たが、何台も走っているため国道ではよく分からない。車は左折して山道に入り、急停車した。この瞬間、アツーサは素早く車から降りた。車は、そのまま急いで走り出した。後ろから犯人に目撃されるのを避けるためである。

舗装されていない道路であった。後方は土埃が舞い上がるため、まったく見えない。前方には双子のような二つの岩山が見えて来た。高さは50mくらいだろうか、それほど大きな山ではない。山の下には草木があるが、上半分は禿山で岩肌が見えている。

車は山道でスピードを緩め、道路脇に止められた。そこからは歩くようだ。平山にはシャベルが持たされた。アツーサの父親は、大きな刀のようなものを持参していた。道がないので、樹木の枝を払いながら進んだ。ジャングルほどではないが、この地域は温帯性気候で緑が豊かである。

アツーサの父親は、平山の手からシャベルを取ると斜面を掘り始めた。よく見ていると、掘るというよりは、削るという感じだった。1,000年以上経っているのだろう、土と草木が堆積しているはずだ。それでも、表土は薄いようで、40cmくらいの厚さのようである。

やがて、シャベルはカツカツという岩に当たる音を立て始めた。その岩が露わになると、かなり平板なものであることが分かった。どうやら扉のようだ。しかし、それは小さく、とても宇宙船を運び込んだ入り口とは思えないものだった。扉が全部露出すると、アツーサの父親はそれを開けた。そこには通路があった。しかし、一人がやっと入れるくらいの大きさなのだ。

アツーサの父親が足からその中に入って行った。中は広いようだ。そして、平山を呼んだ。平山が同じようにして中に入ると、アツーサの父親が灯りを点けていた。壁にある松明のようだ。

しかし、洞窟の中には何もなかった。アツーサの父親は、驚愕を隠せないでいる。あるはずのものがないのだ。盗掘でもされたのだろうか。父親は、何もない空間をみつめていた。やがて、二人は仕方なく、入って来た通路から外に出た。父親は、諦めきれないかのように通路の入り口を見ている。

その時、トラックのような音が聴こえて来た。平山が音の方を見ると、二人の男とアツーサが接近して来る。そしてよく見ると、アツーサはカリムを抱いている。しかし、アツーサには弁髪の男の拳銃がつきつけられている。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-11-04 06:39 | Comments(2)
Commented by MAKIAND at 2007-11-05 11:39
ますます怖くなってきました。
Commented by えるだま at 2007-11-05 12:22 x
MAKIANDさん、そうですか。
イランのカスピ海の近くにある山地でのことです。どうなりますやら。


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