えるだま・・・世界の国から

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2007年 10月 29日

遥かなる遺産 Part3(6)

「ミスター・平山。主人はようやく働き始めました」
「そう、良かったね」
「はい、でも、まだ軽い仕事だけのようです」
「しかし、本当に奇跡のようだね、あれだけの大事故だったのに」
「はい、神に感謝いたします」

アツーサとは二年も一緒に仕事をして来たのだから、平山にはアツーサの考えていることはだんだん読めて来ている。ご主人の交通事故の連絡を受けたとき、放心状態にみえたアツーサだが、ご主人をなくしたらどうやって子供と暮らしていくのか、そんなことを考えていたのだろう。

平山がみていて、アツーサが心配性なのが分かる。アツーサは、平山が帰国したら、その後どうしたらいいのか、そんなことを考えていることもある。イランでは学歴のある女性といえども、意外といい働き口がないものなのだ。大学でも仕事をしているマジディ部長だが、最近の学生は女子ばかりだと嘆いていたことがある。

「ミスター・平山。週末からの三連休を利用して、私の実家に行きませんか?」
「遠いのでしょう?」
「車で7時間くらい掛かると思います」
「ご主人はどうするの?」
「主人は仕事があるので、子供だけを連れて行きます」
「アライーの車で?」
「はい、できれば・・・」
「そう、じゃぁ、アライーに頼んでみよう」

平山は忘れていたことだったが、アツーサの実家に行くということを前にその話をしたことがあった。アツーサのご主人が自宅で療養生活をしているということもあり、そんなことは完全に忘れていたのだった。



木曜日の朝、アライーの運転でアツーサと子供のカリムが平山のアパートにやって来た。イランでは、天気の心配をする必要がないのがいい。いつも快晴である。なにしろ年間雨量200mmという世界である。しかし、アルボルズ山脈を越え、カスピ海周辺になると話は違う。年間降水量は日本並みにある。

アパートを出て30分も高速道路を走るとテヘランの郊外になる。周囲は樹木のない、岩山ばかりである。その岩山を縫うようにして道路が作られている。テヘランからカスピ海方面に出るには、2ルートあり、今回アライーは東回りのルートを選んだ。

(参考)テヘランの郊外
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標高がどんどん上がっていく。周囲の山々の頂上付近には、まだ雪が残っている。冬には格好のスキー場となり、テヘランからのスキーヤーたちで賑わうのだ。

(参考)冬はスキーヤーで賑わう
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車はアルボルズ山脈越えの一番高いところに到達した。3,000mくらいの標高だろう。そこには、エマムザデハシェムという聖地がある。平山には、詳細は分からなかったが、こういうエマム(聖人)にまつわる聖地はイランの各地にあるものだ。

(参考)エマムザデハシェム
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やがて、ダマヴァンド山が見えて来た。標高5,670mのイランの最高峰である。もちろん万年雪に覆われている。頂上がカルデラで扁平なら富士山のように見えるのだが、こちらは頂上まで尖がっている。

(参考)ダマヴァンド山
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(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-10-29 00:00 | Comments(0)


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