えるだま・・・世界の国から

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2007年 10月 23日

遥かなる遺産 Part2(15)

「ようこそ、平山さん」
「岡野さん、すいません、突然で」
「いいですよ、この地では何の娯楽もないですから、いつでも歓迎です。わはは」
「実はね」
「まぁ、ゆっくりお話をお伺いしましょう。あちらにどうぞ」

岡野は、街の夜景の見えるソファに平山を導いた。テヘランには、大きなネオンサインがないので、星の集まりのように見える夜景はことのほか美しい。

「平山さん、夕食はどうしましょうか?」
「ああ、何も考えていませんでした」
「では、冷蔵庫にあるもので、なんとかしましょう。出前という手もありますけどね」

岡野は、冷蔵庫からビールを出して来た。どういう訳か、イカの燻製まで持っている。

「イカの燻製ですか、どうしたのですか?」
「日本から送って来たものです」
「へぇ、それは素晴らしい」
「で、お話というのは?」
「うん、例のミソラ、いやミトラがどうやってアリマに勝てたかってことですが」
「ああ、それは興味深いお話ですね」
「アリマはサイエンス・テクノロジーを使い、武器を開発しましたね」
「うん」
「マツダは法というものをファリドゥン王に伝授したという」
「うん」
「では、ミトラは何が特技だったのでしょうか」
「それがポイントですが・・・」
「ミトラの得意技は、集団催眠だったんじゃないかと思うのですが」

岡野は、ここでしばし沈黙した。平山は、岡野が口を開くのを待った。

「なるほど、鋭い洞察ですね。それなら、武器がなくても、いや戦わずに、アリマの取り巻きを洗脳できる」
「そうなんです。アリマとて一人では戦えません」
「心理学が科学技術を負かしたってことかぁ」
「そういうことになりますね」
「イエス・キリストやモーゼ、マホメットなどもそういう能力があったのかなぁ」
「そこまではなんとも言えませんが、宗教の創始者にはそういう能力は必要かも知れない」
「政治家にもそういう才能があるのかも」
「ヒットラーとかナポレオンとか、ジョン・F・ケネディもかな」
「日本にもそういう能力を持った首相がいましたね」
「ああ、どういう訳か衆議院の3分の2以上の議席を確保してしまった」
「なるほど、あの理由が分かったような気がする」

平山が思っていたよりも、話がどんどん逸れているような気がした。それを察したか、岡野が話を戻した。

「ところで、ミトラはどうなったと思いますか?」
「ああ、それについてはまだ考えていなかった。死んだんじゃないかな」
「そうでしょうか。神は死なないのでは?」
「彼らは神じゃないでしょ。宇宙から飛来した単なる生命体でしょう」
「平山さんは、せっかく精神面に踏み込んだのに、そこで自然科学が邪魔をするのですか」

平山には、岡野の発したこの台詞の意味が理解できなかった。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-10-23 00:00 | Comments(0)


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