人気ブログランキング | 話題のタグを見る

えるだま・・・世界の国から

elderman.exblog.jp
ブログトップ
2007年 10月 18日

遥かなる遺産 Part2(10)

「平山さん、もっと面白い話をしようか」
「うん、どんな?」
「クリスマスってあるけど、クリスマスってイエス・キリストの誕生日でないということは分かっていることなんだ」
「へ?そうじゃなかったんだ」
「伝説によれば、ミトラは、12月25日、冬至の日に岸壁から生まれたそうだ」
「それが、今日のクリスマス?」
「ローマ帝国の時代、キリスト教の布教のために、いろいろな宗教の要素を取り入れたという話をテレビ番組でみたことがある」

平山は、あまり宗教に関する知識はなかった。自身の宗教について訊かれれば、仏教徒と答えるが、葬式とお盆、お墓参りくらいでしか仏教とは縁がないのだ。岡野は話を続けた。

「アフラ・マツダって、仏教では阿弥陀如来、別名で大日如来なのだそうだ」
「え?仏教とミトラ教って関係があったの?」
「ミトラは、弥勒菩薩だという」
「うひゃぁ、すごい話だぁ」
「それには、一つの説があってね。紀元前550年頃、マギ・ゴーマタという人がいたそうな。メディア王国のミトラ教の高位をマギというそうだ。釈迦の本名は、ゴータマだよね。この二人の生きた時代はほとんど変らないという。もし、これが同一人物なら、釈迦とミトラ教とは関係が深かったということになるね」
「ゴーマタにゴータマ・・・本当のような嘘のような」
「大日如来がアフラ・マツダだということになると、大日信仰では問題になるだろうな」
「むう・・・」

平山は、ケルマンシャー州でみた唐草模様と天使のようなレリーフを思い出していた。ペルシャ帝国から多くのものが日本に伝来したというのは事実のようだと思った。岡野は話を続けた。

「どうしてイランでは、ミトラ教でなく拝火教、別名ゾロアスター教が普及したと思う?」
「あ、そうだ、どうしてだろう」
「夢にも出て来ていただろう。ファリドゥン王はアフラ・マツダに感謝し、それがペルシャ帝国に引き継がれたんだね」
「夢を根拠にされても困るけど」
「もっと言えば、ペルシャ帝国の王たちは、拝火教だけなくミトラ教も同時に崇拝していたそうなんだ。これはちょっと不思議な感じがするけど、平山さんの夢のような筋書きが背景にあるなら納得できるね」
「うひゃぁ、我ながらよくできた夢だなぁ」
「あはは、面白いでしょう」
「なんだか、夢の話が全部本当にあったことのように思えて来ちゃった」

平山は、岡野の博学に感謝した。以前、岡野の言っていた「辻褄が合う」というのはこのことだったのかと思った。岡野はさらに続けた。

「ところで、ゾロアスターって半分人間で半分神様って知っていた?」
「いや、知らない。ゾロアスターって人の名前なのか」
「善神のアフラ・マツダとアーリマンとの戦いは何度もあったらしい。神様だから、死んでも死なないはずだし、今でもいるんじゃないかな」
「おいおい、怖い話になって来たねぇ」
「神が死んだと宣言したのはニーチェだったけどね」
「ああ、ツァラトゥストラはかく語りきだったね。ああ、それがゾロアスターなのか」
「ツァラトゥストラは、ドイツ語読みだね」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。

by elderman | 2007-10-18 00:00


<< カヤの木の新芽      スイートアリッサム >>