えるだま・・・世界の国から

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2007年 10月 12日

遥かなる遺産 Part2(4)

セミナーの二日目が終わった。ピラステ局長は既にテヘランに戻っている。ケルマンシャー州の局長は、この日もランチの後、平山たち一行の観光案内をしてくれた。平山は、なんと親切な接待だろうと思わずにはいられなかった。

この日案内された場所は、ターゲ・ボスターンというペルシャ帝国の遺跡であった。平山は不勉強だったため、ケルマンシャー州にそういう遺跡があるとは思ってもいなかった。しかし、考えてみれば、ペルシャ帝国はイランからイラクにかけてその中心があったので、イラクの国境に近いケルマンシャー州にそういう遺跡があっても不思議ではないのだ。

どこからともなく案内人が現れた。ペルシャ語だが、遺跡の説明をしてくれるらしい。セミナーが終わってもアツーサはまだ通訳の仕事をしなければならない。

案内人によると、ケルマンシャーには「ベヒストゥーン」という有名な遺跡があるが、今は修復中で見られないということだった。ベヒストゥーンには碑文があり、これが楔形文字の解読の端緒となったということである。

ターゲ・ボスターンには、ササン朝ペルシャ時代の建築物の名残があり、またいくつもの大きなレリーフが断崖に彫られていた。平山は、断崖に掘られた洞窟を見て驚いた。

「あ!ここにも天使がある」
「ミスター・平山、これを見たことがあるのですか?」
「羽のある天使のようなものをパサルガダエで見たんだ」
「そうでしたか」
「同じじゃないけどね」
「そうですか」
「時代が違うしなぁ・・・」
「壊れてしまっているけど、左側にも天使がいるようですね」

平山は、以前岡野と一緒に旅行し、その後にみた夢を思い出していた。

「天使が二人、マツダとミソラか、あるいはアリマとミソラかな。まさか、いや、そんなはずはない。あれはただの夢だ」
「え?」
「いや、なんでもない。気にしないで」

案内人は、さらにササン朝時代の人々の暮らしについて、当時は鹿や猪を狩りしていたことなどをレリーフの絵から説明してくれた。平山は、当時の人々は猪肉を食べていたのかも知れないと思った。

「お、唐草模様だ」
「ミスター・平山。こちらもご存知でしたか?」
「唐草模様は日本にもあるけど、外国から来たものなんだ。ひょっとしたら、ここから伝わって行ったものかも知れないな」
「じゃぁ、天使も日本にあるのですか?」
「天使ってないと思うけど、似たような図案の絵はあったような気がします」
「日本って遠い国だと思っていましたけど、かなり昔からつながりがあったのですね」

夕方にはテヘランに戻る飛行機が出る。ケルマンシャー州の局長は、ピラステ局長が既に帰ったにもかかわらず飛行場まで送りに来てくれた。マジディ部長や平山たちは厚いもてなしにお礼を言って飛行場の中に入って行った。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。

(参考)ケルマンシャー州にあるターゲ・ボスターンの遺跡
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by elderman | 2007-10-12 06:54 | Comments(2)
Commented by はしばみセーラ at 2007-10-12 22:08 x
Part1の夢につながる事柄が出てきましたね。ワクワク!
ケルマンシャー州にあるターゲ・ボスターンの遺跡、これがこの物語の閃きを受けられた場所なのですか?
Commented by えるだま at 2007-10-12 22:46 x
はしばみセーラさん、こんばんは。^^
鋭いですねぇ。先を読まれちゃいそう。(汗)
今回のお話は、ちょっと長いですから、どうでしょうね。ここの遺跡のせいかなぁ。やっぱり、パサルガダエの遺跡の印象の方が強いかな。


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