えるだま・・・世界の国から

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2007年 10月 10日

遥かなる遺産 Part2(2)

「ミスター・平山。ピラステ局長は一泊して翌日の早朝テヘランに戻りたいそうだ」
「そうですか、問題はありません。アツーサ、それで航空券を手配してください」
「すまないな」
「いえいえ、局長は忙しい方ですからね」
「ピラステ局長は、ケルマンシャー州の出身なんだ」
「え!それは知りませんでした」
「ケルマンシャー州出身者は体格が良くて勇ましい」
「なるほど、まさにピラステ局長ですね」

ピラステ局長は身長が185cmもある巨漢である。しかし、平山には、その眼差しは優しく、人望のある人物に思われた。

「マジディ部長、ケルマンシャー州にはクルド人が多いと聞いていますが」
「うん、そう」
「ピラステ局長もクルド人なんですか?」
「そうです」

平山は、クルド人でも政府の幹部になれるのかと少し不思議な気がした。そして、同時に自分自身の先入観に気がついた。そもそも、イランという国は多民族国家なのである。人種としては、イラン人の大部分であるアーリア人だけなく、クルド人、アラブ人、アゼルバイジャン人、トルクメニスタン人が混在しているのだ。

マジディ部長は、北西部にあるタブリーズの出身だから、アゼリともタボタボイとも言われる。アゼリとはイランのアゼルバイジャン州に住む人たちであり、タボタボイとは、平山の聞いているところではトルコ系で成功者という意味もあるようだ。

タブリーズからトルコまでは数10km程度だろう。そのせいか、テヘランに住んでいる人たちはトルコ人という言い方をするときがある。イランでは、ジョークによくトルコ人が登場するが、このトルコ人というのはどうやらアゼリを指しているようである。

平山が赴任した当初、サーハンディに耳打ちされたことがある。マジディ部長のところでロバという言葉は使わないようにと言うのだ。ロバはこのトルコ人を意味するという。平山がマジディ部長と親しくなった今、マジディ部長は自分でロバをみつけると「親戚がいる」なんていう冗談を飛ばしたりもする。もちろん、部下のいる前では言わないだろうと平山は思っている。



ケルマンシャーへの出張の日になった。平山とアツーサは、早朝であるが、1時間前に飛行場に到着していた。しばらくして、ピラステ局長、ハジハディ氏、シーマ女史が集合した。しかし、搭乗時刻になってもマジディ部長は現れなかった。平山たちは、仕方なくバスのターミナルのような待合室に進み、搭乗を開始した。

飛行機の中で平山は、マジディ部長に頼んでおいた講演をどうしようかと考えていた。ケルマンシャーへの飛行機は一日に何便もある訳ではない。乗り遅れれば、早くても夜の便になってしまうだろう。セミナーは到着後直ぐに開始されることになっていた。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-10-10 00:05 | Comments(0)


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