えるだま・・・世界の国から

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2007年 10月 02日

遥かなる遺産 Part1(10)

平山と岡野は、タクシーでアータシュガーに向かっている。二人とも、エスファハンのエマームスクエアのモスクを観光してその感動が冷めやらないでいた。目指すアータシュガーまでは、約10kmしかなかった。

アータシュガーが見えてくると、平山はヤズドで見たものとは違うと思った。岩山の頂上に干し煉瓦造りの建物が見えるが、ヤズドのものよりもずっと小さく見えた。タクシーを待たせて、二人は岩山を登ることにした。

「岡野さんは、拝火教について詳しいのですか?」
「いいえ、ほとんど知りません。平山さんは?」
「ヤズドで拝火教の寺院と鳥葬の塔を見たことがあるけど、拝火教がどういうものかは全然知りません」
「拝火教というくらいだから、火が重要なのでしょうね」
「ええ、1600年近く燃やし続けているという火がありました」
「火が生命のエネルギーの源とでも考えているのでしょうか?」
「どうなんでしょうねぇ」

岩山のきつい傾斜を登っていくと、頂上には神殿のような建築物があった。

「平山さん、これは鳥葬の施設じゃないようですね」
「ヤズドでみたものは、もっと大きなものでした」
「これは、火を燃やす施設だったようにみえます」
「ここから見るエスファハンの景色からすると、エスファハンの街からここがよく見えるということでしょう」

頂上にある神殿のようなものと言っても、直径が数mの円柱に窓が開いているようなものであった。高さはせいぜい3m程度の小さいものである。現在、屋根はないが、果たして屋根があったのかどうか、この二人にも分からないようだ。

イランという国、国土のほとんどが砂漠のような草木のない土地だが、人々が住む街には緑が多い。アータシュガーから見るエスファハンの街には緑が溢れていた。日本での開発行為では樹木を伐採するが、イランでは事情がまったく反対である。街の樹木を伐採したりしたら、大変な懲罰があるという。

二人は目的地の見学を済ませると、エスファハンの街に戻った。アツーサの予約しておいてくれたホテルは、エマームスクエアにもザーヤンデ川にも近いところだったので、川に架けられた美しい橋の造形を楽しみ、エキゾティックな夜景を味わうことができた。

翌日、ヤズドに着くと、二人はまず最初に拝火教の寺院に向かった。平山はその寺院をみてがっかりしたのだったが、岡野は少し違っていた。

「平山さん、あの屋根についているシンボルだけど、鳥みたいですね」
「鳥に乗った神様でしょうか?」
「鳥が人を運ぶのかな、あるいは何か象徴的な意味があるのだろうか・・・」

岡野は独り言を言っているようだった。平山は、荘厳さのない寺院だったので、あまり気にとめていなかったものだが、岡野には興味深いものだったようだ。

その後、鳥葬の塔に向かったが、二人にとっては西部劇で見られるような原野と荒々しい岩肌をむき出しにした山脈の方が印象深いもののように思えた。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。

(参考)エスファハンのアータシュガー
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by elderman | 2007-10-02 00:33 | Comments(0)


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