えるだま・・・世界の国から

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2007年 09月 30日

遥かなる遺産 Part1(8)

「さすがにフランス人ですね、ボルドー産のワインだ」
「そうですね、大使館だと何でも運び込めるのでいいですね」
「日本大使館もそうなんだろうなぁ」
「私たちには分けてくれないでしょう」
「誰かを招待すれば少しは持って来てくれるかもよ」
「あはは、それはいい考えですね」

岡野は、サラダとカレーライスを手作りで用意していてくれた。小まめな人だと平山は思った。赤ワインとカレーライスなんて日本ではまずやらないが、それほどまずい組み合わせでもないようだ。

「ところで、平山さん。ノールーズのときは一時帰国されるのでしょうか?」
「いや、この前一時帰国したばかりなので、イランにいます」
「でも、正月休暇なのでしょう?」
「うん、どうしようかなぁ」
「もし、よければエスファハンに一緒に行きませんか?」
「エスファハンですか、世界の半分があるというところ、興味がありますか?」
「ええ。まぁ」
「エスファハンは綺麗な街だから、何回行ってもいいけどね」
「これまでに何回も行かれています?」
「いや、一回しか行ったことはないし、しかも出張だったからあまり観光はしていません」
「それならどうでしょう?」

この誘いを受けて、実は平山は苦慮していたのだ。出張でもいつもアツーサに同行してもらっていたからである。岡野と二人だけの旅行となると、ペルシャ語がほとんど話せないのでは不自由な気がするのであった。ノールーズ中は、アツーサに同行を依頼する訳にもいかない。

「岡野さんは、ペルシャ語はできるのですか?」
「いいえ、できません。平山さんは?」
「私は挨拶だけです。1年もいながらちっとも覚えられなくて・・・」
「大丈夫でしょう。エスファハンは有名な観光地ですから、英語でも通じますよ」
「確かに、お土産店、ホテルでは英語は通じます」
「外国人観光客も多いからタクシーの運転手も大丈夫でしょう」
「岡野さんは楽観的なんですねぇ」
「あはは、そういう性格かも知れません」

岡野の楽観的な態度のお陰で、平山はアツーサなしで旅行に出かけてみようかという気になって来た。前回のエスファハンは日帰りだったので、エマームスクエアの夜景も知らないし、モスクももっとじっくりと見てみたい気があった。

「平山さん、ところで、エスファハンにはアーテシュガというのがあるのですが、知りませんか?」
「え?全然知りませんけど」
「拝火教の鳥葬を行う場所だと思うのですが」
「へぇ、エスファハンにそんな場所があるのですか?」
「はい、世界遺産だけでなく、そこも見てみたいのです」
「街から遠いのでしょうか?」
「それほど遠くないと思います。せいぜい20km程度じゃないでしょうか」
「それなら問題ないですね。簡単に行けるでしょう」
「是非見てみたいのです」
「へぇ、あんなものをねぇ」
「ああ、ご存知だったのですか」
「いいえ、エスファハンにあるということは知りませんでしたが、ヤズドでは見たことがあります」
「ヤズドといえば、あの拝火教の総本山ですね」
「はい、そこで鳥葬の塔というのを見たことがあります」
「そこも行けませんか?」
「エスファハン-ヤズドという旅行コースなら簡単にアレンジできるでしょう。それに面白いホテルがありますよ」
「そこまでお付き合いをお願いしてもいいでしょうか?」
「せっかく出かけるのですから、エスファハンだけではもったいないというものでしょう」

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-09-30 09:35 | Comments(0)


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