えるだま・・・世界の国から

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2007年 09月 29日

遥かなる遺産 Part1(7)

「一回来ているはずなんだけど、どうしても思い出せなかったよ」
「ああ、そうですか、表札を出しておけばよかったかな」
「いや、それは止めておいた方がいいんじゃないかな。外国人ってことで狙われたら困るからね」
「そんなに治安が悪いのですか?」
「いや、万が一ということを考えてのことです」
「そうですか。まぁ、入ってください。あちらのソファーにどうぞ」

平山が部屋の中をみると、場所の記憶がすっかり消えたとは言え、一度来たことのある部屋だからそれを忘れてしまうということはなかった。家具の位置は全然変っていなかった。前任の永井氏が家族連れだったのだから、単身赴任の岡野には十分な広さといえるだろう。

「ソファにかけていてください。ビールを持って来ます」
「へぇ、もうビールを手に入れたのかぁ」
「はい、前任者が連絡先を残しておいてくれました」
「私は全然知らないけど使用人がちゃんと手配してくれるよ」
「使用人ですか、ここには週に3回メイドが来てくれます」
「そうね、そのくらいで十分かな」

岡野が持って来たビールはトルコ製のビールだった。アルコール度数8%という代物で、日本のビールとはずい分味が違っている。平山は、今ではハイネケンの缶ビールを手に入れることができるようになったが、1年前にはそれはほとんど不可能だった。それでも、アムステルというオランダのビールを手に入れることはできた。

「こんなものしかありませんけど」

と言って、岡野が出してくれたのは、日本からのおつまみだった。平山のように既に1年以上もイランにいると、日本からのものはバザールで買う以外には何もなくなっている。

「おお、嬉しいなぁ。バザールでは柿の種しか買えないからねぇ」
「ワインもありますから、どうぞゆっくりしていってください」
「ありがとう。でも、どうやってワインを手に入れたのですか?」
「フランス大使館に知り合いがいるので、少し分けてもらいました」
「それはすごいなぁ」

まだイランに来て1か月くらいだというのに、岡野は世才に長けているようだ。平山が部屋の中を眺めると、専門書以外に先日の話のようにUFOとか遺跡の本が置いてあった。その件が気になったので、平山は訊いてみた。

「どうですか、その後、イランに面白そうな遺跡はありましたか?」
「残念ながら、今のところはそれらしい遺跡はないようです」
「宇宙人も砂漠は避けたのかな?」
「あはは、そうかも知れませんね」
「いままでにどういうものをご覧になられたのでしょうか?」
「ほとんどが本やテレビ番組です。壁画とか不思議な話とか・・・」
「例えば?」
「古い地図に南極大陸が正確に描かれていた」
「ああ、聞いたことがあります。古代に高度な文明があったかも知れないというやつですね」
「ええ、不思議な話です。氷が解けなければ見えなかったでしょうに」
「じゃぁ、ナスカの地上絵もですか?」
「そうですね、誰に見せるためのものだったのかとか疑問です」
「なるほど、そういう話に興味をもたれているのですか」

岡野は自分の興味のある分野の話になっても冷静なようにみえた。平山は、いわゆるUFOマニアとは違うようだと感じた。むしろ遺跡に興味があるのかと思ったが、一番有名なペルセポリスなどにはあまり関心がないようだった。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-09-29 09:55 | Comments(0)


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