えるだま・・・世界の国から

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2007年 09月 28日

遥かなる遺産 Part1(5)

アルコールが回ってくると当初の堅苦しさは消え、参加者の個性がそれぞれ見えてくる。これが日本流の人との付き合いだろうと平山は思っている。本音と建前というか、5時から男なんていうのも日本独特の習慣に起因するものと思うのだ。アルコールのせいもあり、最初は緊張していた岡野も次第に打ち解けて来た。そして、突然言い出した。

「私はUFOを信じています」
「へぇ、見たことがあるの?」
「いいえ、そういうのではなくて、存在を信じているということなんだけど」
「宇宙は広いから、そういう意味ではUFOというのは存在するだろうね」
「そこまで大きな話ではなくて、えっと・・・」

平山は、岡野がUFOマニアなのかと思った。岡野はしばらく考えた後、話を続けた。

「UFOが地球に飛来したことがあると信じているということなんです」
「何か証拠があるの?」
「証拠はありません。ただ、そう考えた方が辻褄が合うと思うんです」
「ピラミッドが宇宙人との交信のために使われたとか?」
「そうかも知れません」
「へぇ、面白いなぁ。そういうことをいろいろ調べているの?」
「はい、面白いと思っています」

興味なさそうにしていた中田が口をはさんで来た。

「で、イランにUFOはどうなの?」
「うーん、まだ分かりませんが、調べてみたいですね」
「ペルセポリス辺りがいいのかな?」
「さあ、どうでしょう・・・」
「イランにストーンヘンジみたいのがあると面白いねぇ」
「そんな話は聞いたことがないけど」と加藤が口をはさんだ。

その後、ダイニングテーブルでスリランカのカレー料理を楽しみ、再びリビングルームに戻った。平山の買いおきの赤ワインはすっかりなくなり、今は名もないブランデーが提供されている。酔いが回ったのだろうか、岡野はまた妙なことを言い出した。

「イランって悪の枢軸なんて言われているけど、世の中に悪がなくなったらどうなんでしょう?」
「イランが悪なんて米国の大統領が言っているだけでしょうに」と応えたのは平山だった。
「いや、ごめん、悪ってことについて言いたかっただけなんです」
「米国は正義が好きだからねぇ」とは中田。
「いつでもコミックの世界にいるようだ」と広井。

すると、岡野が真面目な雰囲気で言い出した。

「楽をして儲けたい・・・なんて悪だと思うけど、そういう動機があるから技術が進歩したのでは?」

一同にしばしの沈黙が訪れた。口を開いたのは中田だった。

「じゃぁ、人殺っていうのは典型的な悪だけどどうなの?」

少し間があって、岡野が応えた。

「戦争で多くの敵兵を殺したら、ヒーローになって勲章がもらえるでしょ」

また、しばしの沈黙。平山は、岡野という人物、面白いことをいうものだと思っていた。

「一般社会と戦争とでは違うんじゃないか」と加藤。
「いや、一般社会と国際社会との違いというだけだと思うけど」
「悪について定義することが難しいということかな?」と中田。
「うーん、悪という部分も必要な要素なんじゃないかって気がするってことなんだけど・・・」
「悪の存在意義かぁ・・・ なるほど、考えてみたら面白いかもなぁ」

すると、平山が口を開いた。

「ノーベルだって爆弾のためにダイナマイトを発明した訳じゃないし、アインシュタインだって原爆のために相対性理論を発表した訳じゃないでしょう。それを悪用した人たちが問題じゃないのかなぁ」
「結果的に悪用した人が、実際はその時点では悪用したとは思っていないと思うけどね」と岡野。
「確かに難しいテーマかも知れないね。原爆を投下した人が悪なのか、命令した人が悪なのか、そうしなければならない状況を作った人が悪なのか・・・」

アルコールが入った勢いで、そんなとりとめのない話が続いた。平山はイランに来てそういう話をすることはなかったので、参加者のみんなが日本人らしいなぁと思うのであった。パーティが終わり、参加者たちがタクシーを呼んで帰ったときは、もう11時を過ぎていた。

(つづく)

(注)こちらはフィクションですから人名など実在するものとは一切関係ありません。
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by elderman | 2007-09-28 02:56 | Comments(2)
Commented by MAKIAND at 2007-09-28 10:16
ははは、面白いですねえ。何か取り留めのない話をしているようでそれ以上の突っ込んだ話にならないところが日本人らしいとも言えるかもしれないですね。
Commented by えるだま at 2007-09-28 11:08 x
MAKIANDさん、そうですね。
お酒が入っての会話ですから、しつこくては嫌われてしまうでしょう。(笑)
ま、妄想の伏線ですから・・・


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