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えるだま・・・世界の国から

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2007年 03月 04日

天使の都(30)

私にとって2回目で5年振りのバンコクである。前回の滞在はたった3か月であったにもかかわらず中身の濃いものであった。それはミーというタイ女性に出会ったお陰だった。彼女の存在なしでは、あれだけ楽しくて忘れられない経験はできなかっただろう。

なぜ彼女があれほど親身になって私に尽くしてくれたのかはよく分からないが、男女の関係を持つことなく、家族も含めて健全なお付き合いをさせてもらったのだった。あれから5年が経った、ミーも28歳になっているはずでる。もう結婚してても不思議でない年齢である。ひょっとして子どもだって何人か持っているかもしれない。

5年前のバンコクは景気が良かった。その後経済危機に見舞われて未だに景気は回復していないようだ。バンコクが前に比べて寂しく見えるのは、私の気持ちのせいだけではないだろう。バンコクを移動しながら景色をみると、どこにでもミーの香りが残っているのだった。

飛行場からバンコクの道にしても今は高速道路が出来ているが、一般道路を走れば前に彼女と一緒に毎日通ったところなのだ。ビクトリー・モニュメント、サンデーマーケット、ラクシー・プラザ、セントラル・ホテル、ミーが一緒にいないバンコクはやはり寂しいものだ。

バンコクの街に出れば、5年前に話題になったスカイトレインは走っているし、80階以上の高さのバイヨクタワー2も完成している。よく買い物に行った伊勢丹の周辺はあまり変っていないが、スカイトレインの駅からの歩道が整備され、伊勢丹の向かいには高級なショッピング・モールもできていた。

土曜日、私は日本食などの買出しに伊勢丹に行こうと思っていた。そして思いつきだったが、前に宿泊していたセントラル・ホテルに立ち寄ろうと思った。レストランで働いていたミスター・タンはまだ働いているだろうか。転職の激しいバンコクである、彼はもうとっくに辞めてしまっているかも知れない。

私は彼のいるレストランでランチをとろうと考えていた。12時頃にセントラル・ホテルに着いた。セントラル・ホテルはほとんど変っていなかった。一部内装が変化したようだと思った。エレベータで7階に上った。以前は7階にも事務室があったのだが、そこは閉鎖されていた。ここにも不景気の影響が出ているようだった。プールは前のとおりだったし、レストランも変わりなくそこにあった。

レストランに入るとキャッシャーのところにいるミスター・タンをみつけた。彼は嬉しそうな表情で私を見た。彼の笑顔を見て私は本当に懐かしかった。ミスター・タンはレストランのスパーバイザーに昇進していた。もう35歳になるという。まだ独身だったがちゃんと彼女はいるのだ。彼はもっと貯金をしないと結婚できないと言った。

ミスター・タン以外は誰も知らなかった。バンコクでの転職は日常茶飯事と言ってもいいくらいである。ミスター・タンがまだここで働いているのは珍しいケースだと思った。彼が言うには今のホテル入居率は40%くらいだと言う。日本人の客も減っていると言った。

「ミスター・ハナイ、今回はどうしてここに泊まらないのですか?」
「職場が遠いからね、長時間通勤はもうたくさんです」
「そうですか、それは残念です」

私の今回の仕事はAIT(Asia Institute of Technology)で大学院生の教育指導を行うことである。そのAITは飛行場からさらに北に、5年前に働いた研究機関よりもさらに北だが主要道路のすぐ脇にある。バンコクからは40kmも離れているのだ。

(つづく)

by elderman | 2007-03-04 19:00


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