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えるだま・・・世界の国から

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2007年 03月 04日

天使の都(24)

私は仕事の関係で黒木リーダーの執務室に行く用事があった。部屋に入るとなんとなく雰囲気が妙だった。私は気にしない振りをして黒木リーダーとの話を進めた。そして、ふと気がついたのだが、ミーが泣いているようなのである。

しばらくすると彼女は執務室から出て行った。あのしっかりしたミーが泣くなんて私には意外だった。私は彼女が周りを気にしないで、私に泣きついてきたら困るななんてことを考えたが、そんなことはなかった。

後でミーに話を聞くと、どうやらマイクロソフトのエクセルの取り扱いでのハプニングだったようである。私はそれをミーが上手く扱えなかったのだろうと思った。福島調整員は女性に対して非常に厳しいのである。ミーは厳しいことを言われたのだろう、彼女にはよほどつらかったと思われたが、彼女はそれ以上詳しくは語らなかった。

福島調整員の発する女性言葉、女性に対する厳しさ、どうやらこれは育ちから来る性の倒錯が起きているのではないかと私は思った。福島調整員は40歳でくらいで独身である。背は普通だが、頭髪は大分薄くなっていて、悪く言えばもうすでにしっかりおやじ風なのである。男性に対して興味を示したりしていないから、私には彼がホモセクシャルだとは思えなかったが、運転手のソムチャイと怪しいというような噂は流れていた。

私は福島調整員の話し方が気持ち悪いので、あまり積極的に接近はしなかったが、帰国した溝口専門家は気にしてなかったようだった。他の専門家たちから距離を置かれてしまった彼だから、私は福島調整員が中立に振舞っていたのかも知れないと思った。

ともあれ私の仕事の関係で福島調整員を煩わせることがなくて幸いであった。普通調整員というのは、現地スタッフと日本人チームの間に立って調整するのが役目なので大変疲れる仕事だと思われる。JOCO関係で50歳以上の調整員は少ないと聞いた、体力・気力が続かないのかも知れないと思った。

福島調整員はインドネシアでの経験が長かった。つまりインドネシア語は話せてもタイ語は話せないのだった。彼の仕事は英語で行われていた。私は彼が本当はインドネシアで仕事をしたいのだろうと思った。

平井専門家の分野に派遣されてきた中田専門家はさわやかで柔軟な性格をしていた。私の分野と一部共通する技術があったので仕事で関係することがあったが、平井専門家はまるで技術移転分野に関係していないような顔をしていた。平井専門家はタイ人スタッフと仲良くすることに熱中しているようだった。そして彼の場合、技術移転に必要な短期専門家を迎え、その世話をしていることが仕事のように見えるのだった。

私は他人の分野まで口を出す気はないので黙ってみていたが、専門家にもいろいろなタイプがあるようである。久保専門家のやっていることもはっきりとは見えなかった。のんびりしたタイの環境で日本の専門家ものんびりしてしまっているのかも知れないと思った。

私の方は講義こそやっているが、参加者の中にきちんと内容を理解している人を見出すことは難しかった。これがこの研究機関の実態かと少し残念な思いであった。そうしている時に、カノックという男性が配属されてきた。私の分野の知識、技術の移転を図ってほしいというのが、ポーンティップ所長の希望だと聞いた。

(つづく)

by elderman | 2007-03-04 20:00


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