人気ブログランキング | 話題のタグを見る

えるだま・・・世界の国から

elderman.exblog.jp
ブログトップ
2007年 03月 04日

天使の都(2)

私の部屋は11階のシングル・スタジオという妙な名前の部屋であった。部屋はワンルームながら十分広く、小さなキッチンも付いており、3か月の滞在では申し分がないように思えた。私はまだ本当のタイ料理を知らなかった。辛いと聞いているそのタイ料理が食べられない場合、自炊もできると思うと心強くなった。

翌日、朝食をとりに7階のレストランに降りていった。レストランはエレベータを降りて、プールへの出口に向かい、その向こうにあるのだ。一旦外気に触れると、早朝だというのに湿った生暖かい空気を体に感じた。レストランにはほとんど客はいなかった。私はまだ早い時間だからだろうと思った。ウエィターが声を掛けてきた。

「サワッディー・クラップ」
「グッド・モーニング。ドゥ・ユー・スピーク・イングリッシュ?」
「イエス、サー」
「ザッツ・グッド」

ウエィターの名前は「タン」と言った。まだ20代で細身の体つきをしたとても優しそうなタイ人だ。私は彼を「ミスター・タン」と呼ぶことにした。レストランには日本食のメニューもあったが、朝食なのでタイのお粥を食べることにした。私は食事を待っている間に気が付いたが、客がほとんどいないのにレストランのスタッフは忙しそうにしている。どうやら朝食のルームサービスが多いようだと気が付いたのだった。

私は食事を済ませて、ロビーに降りて迎えの車を待った。ロビーの中にはソファーがあり、外にも椅子が用意されていたが、私は外の庭を眺めながら迎えの車を待った。庭にはいかにも常夏の国らしい常緑樹が植えられ、2階まである天井にも届きそうに成長していて、薄暗い雰囲気になっていた。庭には小さな池があり、そこでは金魚が泳いでいた。

迎えの車が到着した。私は福島調整員と一緒にJOCO(Japan Overseas Collaboration Organization)事務所に向かい、所長に挨拶をした後、ようやく今回の仕事の職場に向かった。お昼に近い時間だと昨日の夕方の渋滞ほどではなく、バンコク市内でも割合スムースに車は進むことができた。車はドンムアン飛行場を過ぎててさらに北の方向に進んだ。

一般道路の上で高速道路の工事をしているため一般道路は日陰になり薄暗かった。飛行場を過ぎた辺りから、周囲のごみごみした感じが消え、開放感を感じた。車はさらに北に進み続けた。次第に景色が田舎の雰囲気になっていく。私はそんな辺鄙なところに職場があるのかと少し驚いた。

大きな立体交差を抜けると、道はさらに田舎道の雰囲気になった。クローンと呼ばれる水路に沿ってまたしばらく走る。バンコクから1時間半くらいかかる場所だ。幅10mくらいのクローンには、なぜかその場所に似つかわしくない中型の木造の船が数隻停泊していた。車はUターンするとさらに路地に入った。道路は舗装もされていない。すごい田舎に研究機関があるのだなぁと思わざるを得なかった。

しかし目的の入り口に到着するとそこには広大な敷地があり、いくつかの建物がみられた。科学技術省の研究機関用の敷地だと言う。その中の一つの四角い白い大きな建物、それが私の向かう研究機関であった。大きな敷地に大きな建物、この田舎に似つかわしくない建築物にみえた。

建物はまだ新しいせいか白い色も綺麗で、建物の端に塔などつければそれこそお城のようだ。私はあまり人工的な環境は好きではないが、ここは蒸し暑いが静かで研究環境には相応しい環境だと思われた。中にはどういうスタッフがいるのだろうか。

(つづく)

by elderman | 2007-03-04 23:40


<< 天使の都(1)      天使の都(3) >>