2006年 10月 26日

えるだまの独り言(7)リスニングルーム

 お役に立てるかどうか分かりませんが、物理屋である私のリスニングルーム設計の基本的なことを紹介したします。本物のリスニングルームを注文したりすると大変高価なものになってしまうので、我が家のリスニングルームはすべて私が設計したものです。扉、棚にいたるまで私の設計通りに大工さんが作ってくれました。

1.遮音性
 リスニングルームでは、まず第一に高い遮音性が求められます。一番いい方法は二重構造の内部の部屋を完全に分離した浮き構造にするのがいいのですが、現実問題としてこれではコストが掛かり過ぎてしまいます。ですから、私のリスニングルームは、そういうスタジオにあるほど遮音性は良くありません。

 手作りのようなリスニングルームの遮音性は、20dB程度の減衰が期待できる程度です。20dBというのは分かりやすく言うと、ガード下の100dBもの音が、オフィスの雑音レベルの80dBになると言ったらいいでしょうか。

 遮音性の一番のネックはアルミサッシでした。エアータイト型の飛行場周辺で使われているようなアルミサッシを導入するとコストが5倍になってしまうので、さすがに諦めたのでした。我が家のものは、普通のアルミサッシを二重にしているだけなので、それほど遮音性が高くならないのです。まぁ、窒息の心配がないからいいんですけどね。
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 音はエネルギーですから遮音するには重たい壁が一番です。壁には21mmのベニア合板と石膏ボードを二枚15cm間隔で使っています。合板と石膏ボードとの間にはグラスウールの吸音材を入れています。壁厚は普通のところで25cm程度です。家の外壁に化粧版が張り付けてありますが、これも多少の遮音性能はあるでしょう。壁からの音漏れは少ないと思います。

 床はフローリングの二枚乱張り(縦横で張る)です。床から音が漏れて行く部分もあると思いますが、縁の下を経由してですから、音圧の距離減衰が大きいものと思います。やはり普通のサッシの遮音性がネックになっていると思います。普通のサッシって結構隙間がありますからねぇ。

 このリスニングルーム、遮音性を追求した結果、予想していなかった副次効果がありました。断熱はいいので夏は涼しく、冬は暖かいのです。冬でも天気のいい日では夜中まで暖房がいらないくらいです。

2.音響特性
 遮音性というのは、近所迷惑の防止のためであって、音響効果には関係のないものです。音響効果として意外かも知れませんが、和室というのは大変優れていると思います。ただ、遮音性能がまったく期待できないのが難点ですけどね。

 リスニングルームで求められるものは、周波数全帯域に渡っての均一な吸収と反射です。ご存知のようにカーテンや絨毯は高音を吸収します。一般の洋間では吸収し過ぎるので、私のリスニングルームでは絨毯は使用していません。残響があまりない状態をデッドと言いますが、クラシックからジャズ、ポップスまで聴く私としてはあまりデッドな音響空間は好ましくありません。

 高音の吸収はカーテンや絨毯を使うなどたやすいのですが、問題は低音の吸収です。鉄筋コンクリート製の建物では低音が部屋にこもってすっきり聴こえないということを体験されている方は多いことでしょう。低音は別に用意した大きな部屋で吸収させてしまうか、壁材や床材で吸収させるしかありません。壁材や床材では低音の吸収には限界がありますから、ここが一番大きな問題になります。

 私のリスニングルームでは、低音はスピーカー側の60cmの壁と二階に逃がしています。スピーカー側の上の天井は音を逃がす構造になっています。私がリスニングルームにいるときには二階には誰もいないという想定でした。ところが私が結婚して、子供ができるとこの状況は変化してしまいました。今は、長男が二階の部屋を使っているので、夜中に大音量でステレオを鳴らすということはできなくなってしまいました。(苦笑)

3.大工さんの常識に反すること
 音響特性の中でいくつかもことについて配慮しないといけないことがあります。一つは定在波対策ですが、これは対面する壁で生じるものです。大きな教会などでは定在波の心配はないようですが、小さなリスニングルームでは無視できないことです。そうは言っても、部屋の形を自由に出来るなんてことは現実的ではありません。余地があるのは天井だけでしょうか。

 天井は一応斜めに作ってありますが、見かけだけの吸音構造にしているので、どこまで定在波対策になっているか分かりません。面白いことはスピーカーの上に10本の一升瓶が乗っています。これは私が飲兵衛だから置いてある訳ではなく、中に砂を入れて共振周波数を調整して定在波だけを吸収させるために用意したものです。

 大工さんの常識に反することをいくつか注文しました。一つは壁の中にある間仕切り棒の間隔です。大工さんは間仕切り棒を等間隔で作ろうとしますが、壁は吸音材として考えているので同じ間隔で作られてしまうと一定の周波数だけを吸収するという問題が生じます。そこで、間仕切り棒をわざとバラバラの間隔で作ってもらいました。

 それから、壁の内装ですが高音の反射を考慮してクロス貼りにはしないで、化粧合板を貼り付けることにしました。大工さんは接着剤をチョンチョンとつけるだけなので、それを見た私はやり直しを棟梁にお願いしました。化粧合板全体に接着剤がついていないと、音のエネルギーで壁がビビリ音を出してしまいます。このやり直しの命令を受けた職人さんは、怒って帰ってしまいました。(汗)

 このビビリ音は棚からも出ますから、私は建具屋さんではなく大工さんにラワン材による無骨な棚を作ってくれるように頼みました。見かけより機能です。さすがに大工さんのやることですから頑丈なものができました。よじ登ってもびくともしません。

 それから、部屋が二重にはなっているのですが、問題はそれがくっついていると音は振動となって伝わってしまいます。ですから、内側の部屋と外側とはできるだけ柔いもので見掛けだけのものにしてあります。以前、子供の友達がそこに乗って踏み抜いてしまったことがあります。実用的でない注文には大工さんも当惑してことでしょう。

 部屋に出入りする扉も大きな問題でした。スタジオなどで使用する扉は高価でどうしようもありません。そこで扉の設計図を描いて建具屋さんに特別注文しました。材料、厚さ、形に至るまで詳細に表現しました。一枚の扉では高価になるし遮音性がとれないので、両側から開く形の二枚扉にしたのです。扉の内側は軟構造にして吸音を図っています。この手作りの扉の遮音性はなかなかのものです。サッシとは比較にならないくらい遮音性はいいと思います。
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 ピアノ、スピーカー側の床は、地面からコンクリートを打ったものです。ですから、跳んでも跳ねてもビクともしません。スピーカーからの振動を部屋の床に伝えたくないということと、ピアノとスピーカーを合わせると350kgを超えるんじゃないかなぁ、その重さを支えるためです。ということでスピーカー側の1mくらいの床は見かけも違っています。

4.最終コスト
 このように手作りのリスニングルームだったので、普通の部屋のコストの2倍で済みました。高いと言えば高いのですが、本物のリスニングルームを施工したりしたら、そんな値段では済まないでしょう。大変協力的だった大工の棟梁には感謝です。材料費と人件費だけでうるさい注文に応えてくれました。もうすでに天国に行ってしまっていますが、今でも大事に活用されている部屋ですから、優しく見守ってくれているんじゃないかな。

 一家に一部屋遮音室、これは案外便利なものです。音楽や映画を大音量で気兼ねなく楽しめるというのが主目的ですが、ピアノなど楽器の練習もできるし、友人たちが集まって深夜まで飲んで騒いでも問題ありません。装置があれば、カラオケパーティもできます。
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by elderman | 2006-10-26 11:21 | 日々の雑感


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