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2006年 09月 27日

国際協力について(15)国際協力とは②

国際協力のあり方について考えていますが、昨今の日本には多くの変化が生じているように見えます。「金があれば何でも買える」とか「儲けることは悪いことですか」などに代表される拝金主義のような風潮です。企業の儲けは事業活動の結果としてあるというのではなく、儲けるために活動しているということを前面に出して来るという社会現象に驚かされています。「お金で何でも買える」という精神であれば、国際協力などは無償資金供与だけでいいのではないでしょうか。

世の中にはお金で買えないものがある、国際協力もその一つではないかと思います。技術移転を通じて、文化・習慣の交流を図り、相互理解に努める。そこには真心や親切さなどがあるはずです。こういったものをすべてひっくるめてお金で買えると考えるようでは、国際協力の成功など考えられないというものでしょう。

日本の国際協力が、単に予算を使った機械的なものであったら、被援助国の感謝も表面的なものに止まるのではないでしょうか。私は、国際協力に関して一番大事なものは人材だと考えています。日本としてできるだけいい人材を派遣する。技術移転活動を通して被援助国の政府の中の有能な人材と交流を深める。こうしてはじめて中身のある国際協力というものが期待できるのではないでしょうか。

2年間や3年間という単発で技術移転をしても、それはそれで完結するかも知れませんが、せっかく作り上げた人のつながりを大事にしないという手はないでしょう。人材を粗末に扱う組織はいずれ人材不足に泣くようになると思います。成果主義というテーマの前で、人材や人のつながりという部分が軽視されるようでは、却って本当の成果から遠ざかるような気がします。

現在、JICA(国際協力機構)が独立行政法人になり、予算の効率的な運用を目指していますが、私が一番心配しているのが仕事の丸投げによる形骸化です。もちろんJICAとしては業務の性格を見極めた上で、案件によっては公募・公示を行い民間コンサルタント会社に業務委託をするのでしょうが、このところの案件数の上昇をみて懸念するものです。

コンサルタント会社には技術的に優秀な人材がいるという点では異論はありませんが、民間コンサルタント会社というものは企業利益を無視して活動はできないものです。しかも、現在の企業間競争の中で、効率を上げてギリギリの利益で業務を請け負うという仕組みでは、”TOR”で示された内容だけの遂行で精一杯で余裕など期待できないでしょう。最悪な場合は、手抜き、押し付けという弊害があります。

現地に行って、現地の人々と話し合いをして、相手方がより求めているもの、ベターなやり方、そういったものも見えてくるものだと思います。短期間で作成された”TOR”で現地に入り、ひたすらその業務遂行をして帰ってくる。簡単な業務ならそれでいいかも知れませんが、そんな簡単な業務ならわざわざ国際協力や技術移転ということをやる必要もないのではないでしょうか。

日本側が当然のことのように思えることでも、被援助国側で引っ掛かるということはいくらでもあります。そういった部分の一つ一つについて議論したり、知識を与えたり、そのプロセスには時間が掛かるものです。そこを安易に通過してしまうと、単に機材を供与して、その使用方法を説明したというだけになってしまうでしょう。

「国際協力について」のシリーズは今回でお仕舞いです。「成果主義」は一見響きのいいテーマですが、JICAはそこにある落とし穴に注意して、これまでの実績を生かして、実のある国際協力、技術移転を継続されることを期待したいと思います。

(おわり)
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by elderman | 2006-09-27 07:51 | えるだまの観察 | Comments(6)
Commented by 宇宙和里 at 2006-09-27 08:27 x
おはようございます^^。いろいろ 考えさせていただけました。協力するにも、何かとお金がかかる・・・けれど、総てが「お金」中心では、困る・・・。何かとジレンマの多い分野なのでしょうね。やっぱり、人のつながり、人への気持ち(技術と共に)を伝える・受けることなどが、根底にあって、始めて実の成る協力となるのでしょうね。 援助を受けた建造物、技術、ノウハウ、などを、自分達だけのものにせず、それをさらに自国民、そして、周辺地域へと分け合う、そういう気持ちも、援助とともに、広がっていったら、格差も少しずつ、縮まるのではないでしょうかね。草の根などは、地域に密着している方だとは、思いますが、大きな援助は、見た目はよいけれど、結局、庶民にそれがどれだけ”伝わっているか”というと、あれこれ、後で”無駄だった”なんていわれることも出てきたりで、はがゆい思いをする事は多いと思います。おっしゃるように、技術移転は、相手国の内情もあるので、やりたくても出来ないなどのジレンマも多いと思いますが、本当に、援助を求めている人々にとっては何が適当(良い、必要、向いている)なのかと、双方で正直に考えられたらいいのに・・・、と思います。
Commented by elderman at 2006-09-27 09:02
宇宙和里さん、おはようございます。^^
難しいテーマですが、お読みいただきましてありがとうございます。
国際協力にはお金がかかりますが、一番大事な人と人のつながり、心というものを忘れてはいけないと思います。日本では簡単にみえることも、被援助国ではなかなかそうはいかないものだし、だからこそ開発途上国という位置に止まっているともいえるものです。
今回は書きませんでしたが、相手国のどういう人から情報を得るかということも大きな影響があるものと思います。政府高官なら誰でもいいと情報収集をしていると、時として国際協力としてものを利用して自分の地位の向上を図るというようなケースもあります。間違ったところへの援助なんていうのは、相当ひどい話ですが、これもないとは言えません。
国際協力、上手くできないなら止めてしまえ、これでは話になりませんね。JICAでは現在も試行錯誤の最中だと思います。
Commented by at 2006-09-27 21:21 x
とても興味深く拝見いたしました。
何処の国でも、同じだと思うのですが・・・
夫々の国にとって<必要な物>が具体的に掴みにくいのでしょうか?
被援助国が必要としている物に対する調査は、やはり時間を掛けて・・・・なんて、良く知らない者が、口にするべきではないのかな?
日本の中だけに居てる人には分からない夫々の国の事情が有るように思うのですが。
それと、日本人の日本人的思い込み・・・も有る様な・・・。
JICAの活動の難しさも知りました。
有難うございます。
やはり、実際に活動された方にしか分からない事・・・沢山有りますよね。
JICAで、活動されている方を何人か、存知あげていますが、細かいことまでは、知りませんでした。
また、ゆっくり考えて見ます。
Commented by elderman at 2006-09-28 08:14
華さん、おはようございます。^^
コメントありがとうございました。JICAは開発途上国からの援助要請を受けてから動き始めます。要請した人と実際に援助を受ける人とが違うことが多いというのが一つの問題点でしょう。政府の高官は日本の進んだ技術がほしいと考えますが、現場は技術的能力の未熟さ、従来の方法への固執などがあったりして素直に技術移転が進まないことが多いと思います。そして、最近は援助馴れというやっかいな問題もあるし、援助する側にも援助疲れというような現象もみられます。JICAの専門家が仕事の内容をあまり公開しないというのは、そういう問題や障害との取り組みが多いからあまり積極的にならないのでしょう。
Commented by 安房守 at 2006-09-28 15:43 x
わずかなりとも国際協力に関わる機会を得た者としてシリーズ全般にわたって身につまされることが多かったように思います。
日本人としての使命感と、現地の一見あまりにも即物的な価値観との違いに加えて孤独な環境もあってはじめは絶望感に襲われたこともありました。
それでも、自分なりに判断しながら出来ることを時間をかけて積み上げるうちに、ある日突然先方のトップから思いがけず「この技術協力では本当に教わることが多い。感謝している。」という言葉とともに雰囲気が一気に心地よいものに変わったことがありました。
プロジェクトには期限があるのは当然で、それが風化するのは避けられないとしても、異国の地でがんばっている専門家がささやかであってもその活動を通して、それぞれに現地の日本人のファンを増やし続けていることを信じています。
Commented by elderman at 2006-09-28 15:58
安房守さん、お疲れ様です。^^
援助馴れ、援助疲れの中、大変だったと思います。でも、時間を掛けて誠心誠意技術移転を進めようとする専門家の姿には心を動かすものだと思います。余分な仕事を持ち込んで・・・なんて思っていた人たちも少しずつ心を開いてくれますね。そういう意味でも人間同士の関係を大切にしたいと思います。安房守さんとはイランでご一緒させていただきましたが、イラン人はその辺りのこと素直に表現してくれましたね。個性の豊かな国民性ですが、心の通じることが多かったと思います。悪戦苦闘している専門家の方々の活動をもっと一般に周知してもいいと思いますけどね。


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