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2006年 09月 22日

国際協力について(11)技術移転のあり方①

改革ムードの日本ですが、過去の方法、実績、そのすべてを否定するというのでは感心できません。過去のいいところはいいところとして評価し、今後に活かすべきだと考えています。JICA(国際協力機構)が独立行政法人に変わってからの現在の動きは、分かりやすいテーマを掲げていても、私はむしろその実効性において少し疑問を感じています。

技術移転活動についてJICAが責任を持つということは大変よいことなのですが、JICAという組織であらゆる専門分野の内容にまで精通することは難しいと思います。ODAは、日本と被援助国との政府間の国際協力です。そういう意味では、もっと国内にある専門知識を有する政府機関の力を借りるべきだと考えています。

つまり、巨大組織である全省庁、地方自治体の支援を受けながら国際協力、技術移転を進めるということです。各省庁も調査ものをコンサルタント会社に業務委託するということはありますが、コンサルタント会社は行政官ではありません。各専門分野、その行政に精通しているのは関係省庁及び地方自治体でしょう。この能力を活用しない手はないし、日本全体での国際協力ということにもつながるのではないでしょうか。

現在のJICAがこの努力をしていないとまでは言いませんが、独立行政法人の「独立」のところに注目し、力みが見られるような気がします。各省庁の力をもっと活用すべきだと考えます。従来の専門家のポスト化という問題点がありますが、そもそもノウハウというソフト型の技術移転の場合、その成果は目に見えないものだと思います。成果主義を尊重するあまり、形のあるものばかり具体化していくというのは、安易な方向性に思えてなりません。

公務員の専門家とコンサルタント会社の専門家とでは決定的に違うところがあると思います。公務員の専門家はほとんど採算性を考慮しないということです。良心的なコンサルタント会社は多く存在することと思いますが、それでも採算ということを度外視した活動というものはできないものでしょう。ボランティアの方が向いているような国際協力ですから、公務員の専門家の性格というものをもっと活用してもいいような気がします。

コンサルタント会社のスタッフが、役人の専門家についてほとんど仕事をしていないという批判をすることがありますが、それは業務形態が違っているからだと思います。JICAがコンサルタント会社に業務委託するものは、試行錯誤の少ないものだからです。私の知る限り、公務員の専門家は常時、「どうしたらいい技術移転が実現できるのか」ということを真剣に模索し、試行錯誤しているものです。

被援助国に入ってガンガン業務を進めていくコンサルタント会社、反対にじっくりと技術移転を進めていく公務員の専門家ですから、それぞれに相応しい役割分担があると思います。現在のJICAはその割り振りを行なっていますが、成果主義というテーマの下で、じっくり型の技術移転が縮小傾向にあるのではないかと私は思っています。

専門家としての経験を持った私が言わなければならない点がもう一つあります。成果主義はいいのですが、その評価があまりにも短期間であるという問題です。その理由は気の短い日本人の国民性かも知れませんが、ノウハウというソフト型の技術移転というのは、大変気の長いものであり、いわば教育とも言えるものだと考えるからです。

教育の成果を1年や2年で評価できるものでしょうか。ヨーロッパ諸国の国際協力は10年単位だと聞いています。移転した技術の定着を図るならば、10年くらいの期間は必要なのではないでしょうか。無理ならせめて5年間といいたいくらいです。1年や2年では技術を紹介しただけのことになってしまいそうです。

一般的に開発途上国での時間の進み方は、日本に比べて倍以上遅いものです。国際協力という分野では被援助国の時間に合わせて、気長に取り組む必要があると思います。日本のペースで進めても相手方はついて来れないことが多いと思います。日本がいくら効率化を求めても相手のある国際協力ですから、この点は大いに考慮すべきではないかと考えています。

(つづく)
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by elderman | 2006-09-22 02:31 | Comments(4)
Commented by kaze at 2006-09-22 08:19 x
丁度ODAでのcコンサルタントの不正問題がニュースに取り上げられていますので、良いタイミングで記事が見られました。
私にはJICAの事情はよくわかりませんが、不正はODAだけの問題ではなく、やはり現場主義(「三直三現」または、わたしの担当するISOの要求事項では必要な「監視」になるでしょうか)は必要な気がします。ただ闇雲に現場に行っても何も解りません、何らかのチェックの手順がJICAにも必要な気がしました。
Commented by elderman at 2006-09-22 09:23
kazeさん、おはようございます。^^
今回の事件と私の持論に関係はあまりありませんが、現場主義でJICAの職員が現場に行って、こういう種類の監視ばかりやるのではちょっと哀しいと思います。むしろこういう事件によってODA全体が胡散臭くみられてしまうというマイナス面が気になります。不正は犯罪ですから、返せばいいという問題じゃないでしょうし、企業体質というものもあるんじゃないかなぁ。某社は、当分指名停止処分になるでしょうけど。
Commented by 安房守 at 2006-09-22 14:06 x
今回の某社の不正は、公務員の裏金作りと同様の低次元の内容で、若干なりとも国際協力に関わった経験のあるものにとっては本当に悲しい思いがします。
あまり考えたくはありませんが、心情的ではない合理的な牽制システムを機能させる必要がありそうですね。
ただ、監査に特化した会計監査法人においても粉飾決算を見逃した例もあるので技術的には難しいかもしれませんが。
Commented by elderman at 2006-09-22 14:31
安房守さん、こんにちは。^^
それだけ某社の経営が苦しかったのでしょうが、不正というのはいけませんね。恒常化しているとしたら、困ったものです。監査法人の信用も地に落ちていますが、こういう不正を監視するためにエネルギーや人件費を使いたくないものです。性悪説てやって行くより、ペナルティを厳しくすればいいんじゃないかなぁ。一時的な指名停止ではなく、数年に渡る取引停止とかね。


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