2006年 09月 19日

国際協力について(8)成果主義②

前回は、成果主義の下、セミナーなどの手段と呼ぶべき活動が成果として扱われるということがあると書きました。成果が目に見えないからこそ、そういう評価方法が浮かび上がるのかも知れません。成果主義というのは、本当に難しいテーマだと思います。

JICA(国際協力機構)では、成果主義のテーマの達成のために、近年”TOR”というものを重視して来ています。”TOR”というのは言わば仕様書であり、どう活動して、何を為すのかというものをあらかじめ決めて専門家などを派遣するというものです。一見、分かりやすい方法に思われますが、そこには落とし穴があります。

まず、”TOR”なるものを誰が作成するのかという問題、”TOR”のとおり実行できるのかという問題、”TOR”のとおりやれば技術移転として成果が上がるのかという問題などが考えられます。”TOR”が明確でない仕事では発注のしようがないし、請け負う方も仕事にならないという意見があるでしょうが、解決策のために、まずは問題点をみていくことが大事だろうと思います。

では最初に”TOR”作成の方法に触れてみましょう。一般的に”TOR”作成の前に、事前調査団が現地に2週間程度入り、聞き取り調査を行います。調査団は専門家及びJICAの担当者によって構成されます。専門家の中にはコンサルタント会社から派遣された顔ぶれもあります。実務はどちらかというとコンサルタント会社の担当者が行うように思われます。

この事前調査団によって作成される”TOR”というものが、その後実施される技術移転の成否を決定すると言っていいほどですから、これは大変責任のある仕事だと考えられます。ですから、事前調査団のメンバーには精鋭が選抜されていることと思います。しかし、私の経験上では、たった2週間くらいの期間で今後、1年あるいは2年という期間で実施される技術移転活動のシナリオを”TOR”にまとめることはかなり難しいと感じています。ここに一つの問題点があると思います。

もちろん、”TOR”の変更ということはできますから、それほど硬直したものではありません。国際協力では相手のあることですから、計画変更ということはむしろ付き物という気がします。”TOR”ができるとJICAはその技術移転の効果的方法を選択することになり、技術プロジェクト型か開発調査型かを決定し、相応しい専門家やチームを公募や公示などにより集め、派遣することになります。

技術移転活動に際して、計画どおりに行かないことはよくあることです。上手く行かないことが”TOR”に起因するのか、実行チームのやり方に問題があるのか、相手政府に問題があるのか、検討しなければならなくなるでしょう。悪いケースとしては、とにかく”TOR”の通りに実行して、場合によってはその内容を相手国に押し付けてくるという場合もあるといいます。

”TOR”に基づいた技術移転が実施されると、それが適切に実施できたかどうかという評価が行われます。私には、その評価の具体的な方法は分かりませんが、JICAの現地事務所の担当者による報告も大事なのではないでしょうか。もちろん被援助国からの意見も聴取していることと思います。ここでの問題点は、技術移転が成功し、活用されているかどうかという追跡調査までは行わないのではないかという点です。業務委託したコンサルタント会社に委託業務費を支払ってしまえば、業務は終了ということになるでしょう。

いくつかの問題点を挙げましたが、JICAとしてはもう一つのテーマである「現場主義」というものを通して技術移転業務の監視、評価を行おうとしているように見受けられます。こういう努力は、すべて「成果主義」というテーマのためだろうと思います。ODAは国民の税金で実行されますから、真摯な取り組みがなされるのは当然のことですね。

(つづく)
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by elderman | 2006-09-19 07:46 | えるだまの観察


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