えるだま・・・世界の国から

elderman.exblog.jp
ブログトップ
2006年 09月 18日

国際協力について(7)成果主義①

JICA(国際協力機構)の現在の二大テーマの一つである「成果主義」に関して書いてみたいと思います。これからは、私自身の意見が多くなってくるものと思います。間違いや知らないこともあると思いますので、その点ご容赦いただきたいと思いますし、ご教示いただければありがたいと思います。

私は、そもそも技術移転というものは目に見えない行為だと考えています。被援助国に機材を供与しても供与された側が使えなければ意味がありませんね。要するにノウハウを教育するというのが技術移転だと言えるでしょう。ですから、どのくらい技術移転が進んだのか、これを評価するということはなかなか難しいことだと思います。

ましてや、ノウハウがどのように被援助国に理解され、定着したのか、そこまで確認するには時間が掛かることだと思います。そういう中で、機材供与というのは目に見えるものであり、日本からの援助だということを宣伝することもできます。被援助国も機材供与に対して感謝しないはずはありませんから、これまで「箱もの」が重宝がられてきたのだと思います。

しかし、その反面、肝心な知識面でのノウハウの技術移転が上手く進まず、結局はせっかくの機材が有効に活用されていないというようなケースを生み出すことになったのだろうと思います。機材は設置すれば稼動できるようになりますが、活用されなければ意味はありません。

なぜ活用されないのか、それには活用の場がないというケース、被援助国が活用する技術水準に達していないというケースの二つがあると思います。活用の場がないというのは、被援助国の行政ニーズに比べ供与機材の方が必要以上に進んでいる場合もあるでしょうし、行政における法制度化が遅れていて、機材があり活用もできるようになったのにも拘わらず現場で使用することができないということもあるでしょう。

被援助国においても政府高官の知識は第一線のものであるはずです。そういう高官が高級な機材供与を日本側に要請するということは当然だと思われます。要請を受けた日本側から、相手国に対して「あなたの国にはまだ早い」とは言いにくいものでしょうから、話はややこしくなりますね。

私は、政策アドバイス方の大気汚染の専門家なのであまり機材を必要としません。そもそも被援助国に機材がないようでは、私の専門分野の指導ができないからです。大気汚染物質の測定を始めようとする国に対しては、私とは違った分野の専門家が必要になります。私の分野のような技術移転になると成果はますます見えないものになります。被援助国の担当者に対して試験でも実施しないと技術移転の成果は分からないかも知れません。

一方、こういうソフト型の技術移転でも目に見える活動というものがあります。セミナーとかワークショップという活動がそれで、これは現地の日本大使館もJICAも積極的に支援してくれるものです。日本という国のプレゼンスを宣伝し、技術移転のパフォーマンスを示すにはいい機会だと考えているからでしょう。そして、被援助国の政府高官も歓迎する傾向のあるものです。

技術移転のための継続的なセミナーには大きな効果があると思いますが、2,3日で開催するセミナーやワークショップには技術移転という見地からどれだけ意味があるでしょうか、私は少々疑問に思います。2,3日で技術移転が完了するくらいなら、被援助国が開発途上国で止まっているはずはないと思います。しかし、現実にはこういうセミナーは、日本だけでなく、国際機関、先進国などによってさまざまな形で開催されています。

セミナー開催には大抵お金が掛かります。被援助国政府との共催になることが一般的ですが、会場の借り上げや参加者の食事、宿泊まで面倒みることがあるからです。私は、こういう短期間のセミナーの場合は、技術移転活動の始めに問題点の提示・解決のための取組みの周知、あるいは最後の仕上げとして技術移転を受けた機関や人々の発表の場というような特別な意味をこめたものが望ましいものと考えています。そうでないと、技術の紹介はできても技術移転にはならないものと考えています。

つまり、セミナーというものは技術移転の手段であって、それ自身が成果にはなり得ないものだと考えていますが、成果主義を掲げると、時として手段が成果というような取り扱いになることがあるように感じています。

セミナーに関する私の個人的な結論として、大きなセミナーの開催は特別な意味を持たせるべきものであり、それ自身は技術移転活動の1工程に過ぎなく、成果として考えるべきものではないということ、そして、技術移転という活動においては対象範囲を絞って継続的なセミナーによる技術移転活動が望ましいものと考えています。全国の技術担当者を対象とする場合には、大きなセミナーの実施ではなく、専門家自身が州や県に出向いて、小規模でも中身のあるセミナーを継続的に実行する方が効果があると考えています。

(つづく)
[PR]

by elderman | 2006-09-18 14:50 | えるだまの観察 | Comments(0)


<< 近所の花37(日本)トロロアオイ      近所の花36(日本) >>