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えるだま・・・世界の国から

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2005年 11月 26日

習慣の差(1)イラン

今回はまだまだ修行が足らないなと思ったお話です。テヘランに着いて、アパートを捜し始めたのですが、日本人紹介のものは満足できるものではなかったので、自分で不動産屋に出向き物件を探すことにしました。運良くいい物件が見つかったので、値段の交渉の末、そこに決めました。

大家さんは、16階建ての高層アパートメントを分譲で買ったのですが、実際に自分の所有物となって利用できるようになるまで9年かかったのだそうです。とってもいいご夫婦で、旦那さんは明晰で落ち着いた性格の方で会社経営者です。20年前のイスラム革命の前は自動車関連会社で働いていましたが、その会社は革命後、国営化されてしまったのです。彼は何も貰わずに会社を出て、自分で会社を始めたそうです。そうしながらも無事に二人の息子さんたちを海外に留学させ、立派に育て上げたのです。現在、旦那さんはまだ54歳で働き盛りです。

そうして9年間待ったアパートが提供され、いよいよ誰かに貸せる段階になったところに、私がふらりと現れたって訳です。新品のアパートと言うこともあって、単身赴任の私は彼らにとって実に喜ばしい客なのです。子供やペット、パーティの多いお客さんでは、アパートの傷みが早いので、困るのですよね。私は申し訳ないけど大家さんの足元をみながら、いい家賃交渉ができたと思っています。

このアパートは大家さんの資産ではありますが、奥様の内装にかける熱意はただ事ではないのです。趣味のように一生懸命なのです。かけるお金も半端ではありません。たぶん、家具、内装で数百万円も使っているのではないでしょうか。物価の安いイランですから、これは途方もない金額だと思います。照明や家具は、イタリア製のものが多いようです。アンティークではないので、滅茶苦茶に値段は張らないと思いますが、とにかく並ではありません。

私が契約したのは、1月中旬です。2月1日に入居する内容で契約書を取り交わしました。契約の前に実際に大家さんの家に行き、今後入れる家具などの説明を受け、それだけで契約書にサインする決断をしたのです。これは少しリスキーで、自分の人を見る目を信じるしかなかったですね。契約後、どうでもいいような家具が提供されるとか、そもそも話がイカサマってこともあり得ますからね。なお、契約時には、3か月分の家賃を全額支払っています。

ところが、入居予定の3日前にアパートに行った所、案の定、家具などが遅れているのです。メインの照明がありませんし、カーテンはまったくありませんでした。注文をして期限を守るように指示したのだそうですが、そこはそれ、日本ではないですからね、なかなかそうはいかないようです。

すると大家さんの奥様は、遅れの説明をした後、悪びれることなく、私にもう2-3日ホテルに泊まってくれないかって頼んできたのです。ホテルに泊まれば、1日100ドル以上が消えてしまいます。契約書も取り交わしたのに、なんでそんな負担を私がするのかって私も少し感情的になったかもしれません。そのせいで、奥様の延々たる説明を聞かされる羽目になってしまいました。いかにいいものを用意しているか、どうやってテーブルを運んだのか、全部私のためにやったっていう勢いでまくしたてるのです。確かに数百万円も投じていい素材を厳選しているのは分かりますけど、所詮彼らの資産ですよね。彼女の延々と続く話の隙間をついて、一体全体、何で遅れたことのせいで、私が自腹を切ってホテルに泊まらなければならないのかって逆襲すれば、また延々と苦労話を聞かされるのです。いい加減ウンザリってところです。

そのバカバカしい話をひとつ紹介しましょう。彼女はダイニングテーブル用にバカでかいガラスのテーブルを用意していたんです。しかし、それが大き過ぎて、エレベータや階段で運び上げることができないのです。それで止む無く、30m以上もあるクレーンでそのガラスを引き上げたのだそうです。あほらしいと言うかなんて言うか・・・

期限を守らない相手に対する不満、これは日本人側。もの凄い努力をして上げているのにちっとも理解してくれない相手への不満、これはイラン側。

そこへ持って来てふと寝室をみると、私がツインベッドをお願いしていたのに、置いてあったのは、シングルベッドがひとつ・・・・なんじゃこれは?と質問すれば、ツインベッドっていうのは、サイズのことで、だからひとつだとのこと、挙句、私は独りで住むのだから十分なベッド数だろうと言ってくる始末。それは私のプライベートなことだから、「It's my business.」って言ったら、ビジネスのお客さんはホテルに泊めるべきで、独りで住むと言う話だったから家賃を安くしたんだ、もっと高額な借り手はいたんだと、また貸しするのはけしからんなど・・・・・また延々とそういう話を聞かされて・・・もう、いやーって感じ。

 それでも、私はじっと長話を聞きながら、何が誤解のポイントかを考え、彼女の話の隙間をついて、その誤解を解き、ベッド数の必要性を説明した上で、入居の遅れを私だけの負担で済ますのは精神的にフェアーじゃないということを理解してもらい、ようやく彼女は静まりました。結局、私はホテルに2泊延泊することにしました。彼女のおしゃべりは延々3時間だったかなぁ・・・・やれやれ

昨日は、旦那からは、「ものを頼む時は丁寧に頼むべきだ、奥様の努力にもっと感謝するべきだ」って説教を受けるし・・・・・とほほ、そんな話じゃないのになぁって感じなんです。まだ、家具も全部揃っていないし、この状態では感謝するもなにもないと思うのですけどね・・・習慣の差なんだなぁってつくづく思いました。ツインベッドの件は、正確にはダブルツインサイズベッドと表現すべきなんですって・・・・(そんな馬鹿な)・・・・でも結局交渉の末、入れてくれることになりました。

入居した当初は、未だにリビングの照明もソファーもないし、ダイニングの椅子もなし、カーテンはしばらくしてやっと寝室にだけつきました。しょうがないから、「まあ、いっか」と自分にいい聞かせ、気長にお付き合いすることにしました。大家さんは本当にいいご夫婦なのです。ただ奥様の長話には、私の使用人も頭痛がすると言っているくらいですけどね。

奥様のいいところをさらにちょっと補足すると、私の入居に際して、冷蔵庫の中に食べるもの、風呂場にタオル、ベッドにシーツ類一式を用意しておいてくれたことです。もちろん、ありがたく思いなさいって言われ方をされました。ここまで来ると、彼女の性格なのか、イランの習慣なのかはちょっと分かりませんけどね。

by elderman | 2005-11-26 00:07


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